Phoebe Bridgers 「Punisher」

Punisher

Punisher

米国ロサンゼルス出身のシンガーソングライターによる、2年9ヶ月ぶり2作目。


ドギツいスカルジャケットを身に纏い、歌詞のあちこちには死やドラッグ、カルトや心の病などのダークなモチーフを散りばめた、ともすれば新時代のゴスミュージックとも捉えられるような作風。ただそれは単に向こう岸の幻想世界への憧憬を示しているわけではなく、むしろ修辞、装飾を多く交えた方が自分の内面をよりリアルに表現できる、という逆説めいた手法は往々にしてあるものですよね。例えば「Garden Song」では幼さからの脱却、「Kyoto」では父親への愛憎、「I See You」では恋人との離別について。その他でも彼女は自らを注意深く内省し、鋭さとデリケートさ、また幾分かの薄ら寒いホラー要素を孕んだ言葉によって、胸に巣食う思いの様々を取り零しなく丁寧に紡ぎ上げています。そうして生まれた歌詞が素朴なフォークスタイルを軸としつつ、ストリングスやホーンの効果的な挿入、また ASMR にも接近するエレクトロニカ通過後のプロダクションも取り入れて、上品で彩り豊か、なおかつ陰影の深い高品質ポップソングに昇華されていく、その手捌きの何とも優美なことよ。サウンド面の方向性は違うけれど Billie Eilish と共振する部分も大きいのでは。

Rating: 9.0/10



Phoebe Bridgers - Garden Song (Official Video)