James Blake「The Colour in Anything」

COLOUR IN ANYTHING

COLOUR IN ANYTHING

ロンドン出身のシンガーソングライターによる、約3年ぶり3作目。


前2作がいずれも40分未満のコンパクトな作品だったのに対し、今回はガッツリ70分越えです。常に余白を大きく残しながら随所に仕掛けを施すサウンドデザイン、その中で深い憂いを纏ったヴォーカルはかつてより大きく感情を昂らせる箇所もあり、ますます表情豊かな手法で色濃い影を落とす。シンプルなピアノ弾き語りの「F.O.R.E.V.E.R.」、珍しくスクエアな4つ打ちで幾らかポップさが増して響く「I Hope My Life」、Bon Iver ゲスト参加で大らかな広がりを見せる「I Need a Forest Fire」等々、全編モノトーンのようでいて実は曲毎に様々な趣向が凝らされ、じっくりと丁寧にひとつひとつの歌を聴かせていく。ポスト・ダブステップの出自なだけに何かとサウンド面での目新しさを彼には求めてしまいがちなのですが、改めて聴くと彼はやはり、従来の意味においてのシンガーソングライターなのだなと。自らの歌によって伝える情感があり、フリーキーとも言えるアレンジはあくまでも歌に寄り添い、歌の輪郭を引き立てるもの。横の広がりではなくまっすぐ深部へと進路を取り、その結果17曲にまで彼なりのパッションが膨張した大作。

Rating: 7.7/10



James Blake - I Need A Forest Fire (ft. Bon Iver)

ANOHNI「Hopelessness」

Hopelessness

Hopelessness

UK 出身、Antony Hegaty による5年半ぶり5作目。


望みはない。以前は闇の底から光を追い求めるように歌っていた彼女が、ここでは冷たい現実のみを徹底的にドライに見つめています。音的にはかつてのアコースティックな質感のチェンバーポップから、Hudson Mohawke と Oneohtrix Point Never をプロデューサーに迎えて前衛的なエレクトロニカへと大胆に方向転換。HudMo はネオンのようにカラフルで切ない色彩を、OPN は対照的にシュールかつダークな緊張感を意識し、それらがちょうど光と影のように交差してダイナミックな流れを構成しています。その中で Antony の紡ぐ言葉は鉄槌のように有無を言わさずストレート。「Drone Bomb Me」「Watch Me」では己の中にある罪悪を自ら罰しようと曝け出し、「4 Degrees」「Obama」は身も蓋もないほどにポリティカル。その他の曲でも歯に衣着せぬエッジィな歌詞がフリーキーなトラックと交わり、今までとは明らかに別種の捻じれた凄味を発しています。この色んな意味で規格外の質量は従来のファンにとっても確実に踏み絵でしょう。もはや内省どころではなく思い切り発破をかけてくる、おそらく現時点で今年一番のプロテスト・アルバム。

Rating: 8.0/10



ANOHNI - Drone Bomb Me