石野卓球「LUNATIQUE」

LUNATIQUE

LUNATIQUE

約6年ぶりとなるソロ8作目。


ジャケット画は往年の成人向け雑誌「エロトピア」からの引用。この手の劇画調のエロイラストには果てしないロマンがありますよね。自分にとっては幼少の頃、友達の家の押し入れにひっそりと隠されていた人生初対面のエロ本がソレでした。「お前開いてみろよ!」「イヤだよ!」などとわざとらしくじゃれ合いつつ、胸の中には未知への世界に抱く好奇心、大人への階段を目の前にした時の高揚感を隠せずにいたことをよく覚えています。そんなノスタルジーすら湛えた女体の神秘へと迫る本作。卓球ならではのシャープさと粘りを兼ね備えた4つ打ちビートを軸としながら、あからさまな盛り上がりは敢えて避け、長い時間をかけてじっくりとダンスグルーヴの熱を高めていくという作り。ミステリアスかつダークな雰囲気で統一された上モノはちょうど夜の淫靡な空気を醸し出し、何かが勃発する予兆のような緊張感とアンニュイな心地良さ、熱さと冷たさの中間を行く絶妙なテンション。これをエロティシズムと呼ばずして何と呼ぼうか。曲タイトルに「月」を示すタームが多用されているのもコンセプチュアルで妄想をかきたてられる。さすがは生粋の変態。

Rating: 7.7/10



石野卓球 『Rapt In Fantasy (Radio Edit)』Ver.1

Dinosaur Jr.「Give a Glimpse of What Yer Not」

Give a Glimpse of What Yer Not

Give a Glimpse of What Yer Not

約4年ぶりとなる11作目。


Dinosaur Jr. は理想のスリーピースを体現したバンドのひとつです。楽曲自体は特別変わったことはしていない、いつも通りの直球オルタナティブ/ハードロック。しかし現場の熱量をそのままパックしたような生々しさ、各パートの太く喧しく鍛え上がったパワフルな鳴り。マーシャル山積みでのほほんと歌う J. Mascis に Lou Barlow と Murph が絶妙なグルーヴ感で食らいついていく、この互いの力がバチバチと拮抗しながらひとつに溶け合うアンサンブルの旨味。オリジナルメンバーでの再結成以降、この綺麗なトライアングルはずっと均衡を崩さずに昔ながらの魅力を保ち続けています。どの曲にも爆音の心地良さがあり、ヴォーカル以上に歌いまくるギターソロがあり、晴れ渡った地平線を見る時のような男臭い哀愁がある。シンプルさ故のタフさ、互いの呼吸を完全に熟知した一体感。リードトラック「Goin Down」や「Good to Know」、「I Walk for Miles」なんかガッツある感じで良いじゃないですか。あと Lou が作曲した「Love is...」「Left / Right」はローファイ2割増しな感じでちょっとしたアクセント。こうやって息を吐くようにロックやれるってなんて素敵なこと。

Rating: 7.9/10



Dinosaur Jr. - Goin Down (Official Video)