Cloud Nothings「Life Without Sound」

Life Without Sound

Life Without Sound

  • アーティスト:Cloud Nothings
  • 発売日: 2017/01/27
  • メディア: CD
米国オハイオ出身の4人組による、2年9ヶ月ぶり4作目。


寂寥。それは彼らの名を世に広く知らしめた前々作「Attack on Memory」の頃から重要なエッセンスでしたが、このアルバムではその側面が特に強調されているように感じます。ちょうどジャケットにもある冬の茫洋とした水平線を眺めるような、心にぽっかりと穴の開いた遣る瀬なさ。セカンドギタリストが新加入してアンサンブルの厚みが増強されつつ、楽曲自体は緩やかなミドルテンポが多数。それは前作「Here and Nowhere Else」での、過剰なほどのパンキッシュな勢いに衝撃を受けた身には随分と地味なように映る。それでも二度三度と聴いてみれば、彼らのもうひとつの武器である牧歌的でフックに満ちたメロディセンスが、よりいぶし銀のテイストで表現されていることにすぐ気付かされます。肺に水が溜まるような荒涼とした切なさを湛えた「Up to the Surface」に始まり、もはや Weezer の領域に迫るポップさの「Internal World」、ネオアコに通じる軽快さだけど歌詞はやはり沈痛な面持ちをした「Modern Act」、そしてクローザー「Realize My Fate」での、自らの内面を洗い浚い吐き出すようにして迫り来る轟音。この音こそがエモの名に相応しい。

Rating: 8.1/10



Cloud Nothings - "Internal World" (official music video)

ぼくのりりっくのぼうよみ「Noah's Ark」

1998年生まれ、横浜出身のラッパーによる約1年ぶり2作目。


思ってたよりも普通に J-POP でしたね。ラップ箇所もあるにはあるものの、それよりもファンタジックな美しさを基調としたエレクトロトラックに乗せ、棒読みとは正反対のしなやかかつ朗々とした歌を聴かせる、真っ当なポップス。その中で歌われる「ノアの方舟」とは何を差しているのか。ざっくり言えば生きる上での手法、解決策のようなものでした。情報過多の世界で何が正しいのか分からない、すっかり心を擦り減らして生きる意味を見い出せない、けれど結局ぼくはぼくのままでいいんだ!世界は実は可能性に満ちている!という自己啓発プレゼン。もしかすると他のラッパーとは一線を画した独自の世界観を見せてくれるのだろうか、という期待を勝手に抱いていたもので、結局言ってることのせせこましさに落胆は禁じ得なかった。モラトリアムの鬱屈を歌っているようで結論はストンと提示済み、その話が無駄に流暢すぎて何だか説教臭く、ともすればやたらと上段目線のスノビズムすら感じるのだけど自分が穿ちすぎなだけだろうか。例えば SEKAI NO OWARI にも通じる悪い意味での軽さ、不自然さを今作からも感じ取ってしまいました。

Rating: 3.2/10



ぼくのりりっくのぼうよみ - 「Be Noble」ミュージックビデオ