Creepy Nuts(R-指定 & DJ松永)「助演男優賞」
- アーティスト: Creepy Nuts(R-指定&DJ松永)
- 出版社/メーカー: Trigger Records
- 発売日: 2017/02/01
- メディア: CD
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R-指定の書く下剋上アティテュード、それはストリートからスターダムを目指すヒップホップイズムよりも、むしろマキシマムザ亮君言うところの白帯スタイルに近い気がします。ヤンキーにもサブカルにも居場所がなく、他人への劣等感をずっと拗らせ続けてきた彼らが、それでもけもの道を行くように自らの流儀を押し通し、そのうち主役を食ってやるとギラついた視線を刺し続ける、そのハングリー精神。フリースタイルダンジョンでは豊富なライミングに加え様々な引用を駆使するなどラッパーとしての矜持をこれでもかと見せつけつつ、直近のツアーではロックバンドとの対バンが目立つといった風に、今では何処にも属せないというスタンスをむしろ楽しんでいるようにも見えます。表題「助演男優賞」はそんな彼らの代名詞そのまま。わずか5曲ながらトラックはヴァラエティ豊か、R-指定もフロウ通り越して歌いまくりと、キャッチーさを強く意識した作りからはヒップホップ内外問わずに自らの魅力を分からせてやるという野心がバリバリ。なおかつラスト「未来予想図」ではシビアな危機感を持って足元を見つめ直す。前作に引き続き彼らのエモさが充満した1枚。
Rating: 8.3/10
Rose Elinor Dougall「Stellular」
- アーティスト: Rose Elinor Dougall
- 出版社/メーカー: Vermilion Records/BBQ
- 発売日: 2017/02/12
- メディア: CD
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前作に当たる「Without Why」が60年代オールディーズを基調としたシックで洒脱な作風だったのに対し、今作は80年代以降のインディロックの要素が強く出たような印象。ネオサイケ風味のギターサウンドに華やかなシンセを添えたアレンジ、その色鮮やかさや快活さによって前作のアンニュイな空気を少しばかり入れ替えています。その点では The Pipettes 時代のポップ感が舞い戻ってきたとも受け取れますが、彼女のヴォーカル自体はその10年前よりも落ち着きや深みをグッと増しており、軽やかなサウンドをクールに引き締める役割を果たしてる。「Strange Warnings」や「Hell and Back」ではクラウトロックの領域まで肉薄した挑戦的なサイケデリアを展開し、その一方で彼女の包容力ある歌心が堪能できる「Take Yourself With You」、ファンキーな躍動感を打ち出したシンセポップ「All at Once」と、ポップスとしての普遍的な良さにクローズアップした楽曲も多数。窓口の広さも奥行きも拡張された豊かな音楽性、その中で彼女の歌声は実に伸びやか、ナチュラルでいて多彩な表情を見せてくれます。聴いてるうちにその気品にすっかり魅了されてしまう。
Rating: 7.9/10