Tyler, The Creator 「Flower Boy」

Scum Fuck Flowerboy

Scum Fuck Flowerboy

カリフォルニア出身のラッパーによる、2年3ヶ月ぶり4作目。


例えばかつての「Yonkers」などで見せていた、強い狂気すら感じさせるダークなハードコアスタイル。この新作ではそこから随分と遠い場所に来ています。リードトラック「Who Dat Boy」や「I Ain't Got Time!」ではアグレッシブな側面も見せてはいますが、本筋となるのは心地良い浮遊感、ラグジュアリーな雰囲気を濃密に醸し出す R&B ポップ要素。その中でも「See You Again」は儚くスウィートなラブソングだったり、「Garden Shed」では自分自身を抑え込んだり隠す必要はないと真摯なメッセージを伝えるなど、実に優美でいてエモーショナル。聴き手に低く囁くラップは今までよりもしなやかさを纏い、まるで夏の夕暮れに照らされた海の中を静かに遊泳しているかのよう。時には何処か Tyler 自身に言葉を言い聞かせている風にも映り、落ち着いた中にも少しばかりの逡巡が見て取れる。ゲストシンガーの柔らかな歌声も適材適所という具合で楽曲に馴染み、アンニュイで芳醇な楽曲が並んだ末にクローザーとして据えられた唯一のインストゥルメンタル「Enjoy Right Now, Today」。そこに提示された彼なりのポジティブな姿勢にはこちらの心も揺さぶられる。

Rating: 7.8/10



Tyler, The Creator - Who Dat Boy

never young beach 「A GOOD TIME」

2014年結成の5人組による、約1年ぶり3作目。


いくつかの曲を試聴した時の印象としては70年代フォーク、特に細野晴臣大滝詠一などはっぴいえんど繋がりの洒脱で饒舌な類、そこにサーフミュージックやシティポップなども加味した、いかにもテン年代インディらしいリバイバル志向。ただ本腰を入れてオリジナル作を聴いてみると、アコースティックな民族楽器などを入れずにロックバンドとしてのシンプルな演奏のみで纏められているからか、そこまで懐古趣味という印象を受けなかった。もちろんスモーキーで渋いヴォーカルの声質であったり、メロディ/フレーズにも昭和 GS 風味のレトロな感触は分かりやすく見られますが、そのレトロ感の中でもベタに泥臭くならない、小粋でスタイリッシュな部分のみを抽出したような、良く言えば高品質であることに徹した音、悪く言えばファッション。歌詞を読んでも彼ら自身のパーソナリティが見えづらく、あくまで音に馴染む言葉をチョイスしているような印象があり、温故知新をモットーとした良心的な曲作り、またそこから醸し出されるスノッビーな匂いも含めて、やはり渋谷系の後継的な存在ですよね。この気取ったサブカル風情がやはり自分にはどうにも。

Rating: 6.0/10



never young beach - SURELY (official video)