Franz Ferdinand 「Always Ascending」
- アーティスト: FRANZ FERDINAND
- 出版社/メーカー: DOMIN
- 発売日: 2018/02/09
- メディア: CD
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ここ数年の間にメンバーチェンジが勃発し、キーボーディストを含む5人編成となった彼ら。スペーシーな広がりを見せる表題曲「Always Ascending」を筆頭に、確かにシンセ類の比重が増加してエレクトロニックな感触が強くなり、バランスの変化を感じさせる部分はあります。ただそれは現在のポップ隆盛の音楽シーンに対応した変化というよりも、フランツというバンドが何者であるかを新メンバーが十分に把握しており、その上でニューウェーブあるいはディスコ/ファンク的な要素を加味してセッションを楽しんでいるという、つまるところ気心知れた仲間たちで好きなようにやっているという感じ。実際に楽曲の方は少しばかり毛色の違った意匠を凝らしながらも、基本にあるのは従来のフランツらしい味を感じさせる、洒脱でクールで愛らしいダンスナンバー。表題曲の他だと変拍子で進行しつつ強烈なフックの効いた「Lazy Boy」、特に80年代フレイヴァーの強い哀愁が目一杯に広がる「Glimpse of Love」、後半で切り込むサックスが刹那的な情熱を撒き散らす「Feel the Love Go」あたりが目玉でしょうか。総じてマイペースに我が道を行くフランツなのでした。
Rating: 7.2/10
V.A. 「Black Panther: The Album」
- アーティスト: Various Artists
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック合同会社
- 発売日: 2018/02/10
- メディア: CD
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今作を主導するのは Kendrick Lamar 。今回の映画のために新曲のみを用意し、それらの多くは「DAMN.」の続編と位置づけられるエレクトロニック・ヒップホップ。そこに旬のラッパーや R&B シンガーを方々から招聘するという気合いの入れようで、現在の Kendrick の創作意欲が留まることを知らない、その勢いの凄まじさを裏付けています。さらに歌詞は映画の登場人物や舞台設定を踏まえた内容で劇伴としての役割を担いつつ、Kendrick 自身の思想、出自といった内面ともリンクさせており、中でも一国の王である主人公と自らを重ね合わせた冒頭「Black Panther」なんかは特に分かりやすい。その他にも SZA 参加の「All the Stars」、ズールー語が異国情緒を引き立てる「Redemption」などは壮大な世界観を想起させる感動的な秀曲だし、対照的に Vince Staples がメインを張る「Opps」は彼の狂気的なダークネスが突出したテクノチューンで殺傷力抜群。サントラという俎上で様々な実験やコラボが行われるという例はこれまでにも数多くあったかと思いますが、ここまで豪華で濃密、かつヴァラエティに富みながら、ひとつの作品として筋を通したものはそうそうないのでは。
Rating: 8.4/10