MC松島 「hospes」

hospes

hospes

札幌出身のラッパーによるデビュー作。


MC松島に対する自分の印象としては、昨年のフリースタイルダンジョンで見せていたようなヒネたアイディアで攻めるトリックスター、そしてバトル MC から吉田沙保里まであらゆる題材を捌く超多作派といったところなのですが、この初の正規フルレンスではそのいずれのイメージも裏切るような作風を見せています。ジャジーで落ち着いた雰囲気で統一された10曲37分というタイトな構成、その中をゆらりと漂うようにラップする様はさながら 5lack や JJJ 、いや下手すればそれらよりさらに脱力感が強い。まあMC松島は正直彼らほどの流暢なラップスキルがあるわけではないのだけど、そこは歌詞の内容で勝負…と思いきや、例えば曲名のイメージを裏切る「ビッグちんちん」「ラッパーはモテる」といった彼らしいユーモラスな曲もありますが、それよりも彼の音楽家としての思想が綴られた終盤「素人主義」~「いまの君へ」のコンセプチュアルな流れなど、むしろ真摯な側面の方が比重としては大きく見える。これはオリジナル作に対するある種の意気込みの表れなのか、彼ならではの個性という点では弱い気もするけれど、意外な一面という意味ではアリか。

Rating: 6.5/10

Screaming Females 「All at Once」

All at Once

All at Once

米国ニュージャージー出身の3人組による、3年ぶり7作目。


今年に入ってから Ty Segall といい Car Seat Headrest といい、インディロックバンドの間ではどうも大作志向ブームが訪れているようで、それは彼女らの新譜にも当てはまります。前作「Rose Mountain」は10曲36分と非常にタイトに纏まった作品でしたが、今回は15曲51分とガッツリ大盛りの内容。そこには彼女らの持つ音楽性を構成する様々な要素が余すことなく展開されています。スラッジメタルかという勢いでギチギチに歪んだギターサウンドが緊張感を強める「Black Moon」、対照的にポップパンク的な明快さと切なさの入り混じったメロディがストレートに響く「I'll Make You Sorry」、70's ハードロック風のダイナミックなグルーヴが痛快な「Agnes Martin」、またフォーク/カントリーの牧歌的な暖かみが沁みる「Bird in Space」など、硬軟を巧みに使い分けた楽曲群はいずれもロック本来の旨味が凝縮されたもので、アルバム全体に何とも豊かな流れを生み出しています。フロントを張る Marissa Paternoster の歌声やギタープレイも相変わらずの男前な切れ味で、スリーピースならではのシンプルかつ骨太なアンサンブルの魅力を堪能できる、充実した一発です。

Rating: 8.5/10



Screaming Females - I'll Make You Sorry (Official Video)