Car Seat Headrest 「Twin Fantasy」

Twin Fantasy [帯解説・歌詞対訳 / 国内仕様輸入盤 / 2CD] (OLE13472)

Twin Fantasy [帯解説・歌詞対訳 / 国内仕様輸入盤 / 2CD] (OLE13472)

米国ヴァージニア出身の4人組による、1年9ヶ月ぶり11作目。


そもそもは中心人物 Will Toledo がたった一人の宅録で制作した2011年の同名アルバムを、正規のスタジオと正規のバンド編成で全曲再録したのが今作とのこと。なので原盤のいかにも宅録的なローファイ感は払拭され、荒々しさは保ちつつもバランス良く整理整頓された音へと変貌しているわけですが、それでも曲自体の魅力が損なわれているわけでは全くなく、むしろ今作が持つ混沌としたパワーを表現するにはこのプロダクションの方が相応しいように思います。PixiesPavement などを連想させる US オルタナティブを基盤に置きつつ、序盤に「Beach Life-in-Death」、終盤に「Famous Prophets (Stars)」といった10分超の壮大なロックオペラが鎮座し、その狭間「Nervous Young Inhumans」「Cute Thing」などでは切なくも痛快なパワーポップセンスが開花。それらの中で彼らが歌っていることというのは、とどのつまり「Beach Life-in-Death」の一節「We said we hated humans / We wanted to be humans」に集約されるのでは。モラトリアム、愛憎、自意識のスパイラルの中で足掻き続け、虚無感に苛まれながらも高らかに声を上げる。正しくドブネズミの美しさ。

Rating: 8.1/10



Car Seat Headrest - "Nervous Young Inhumans"

Belle and Sebastian 「How to Solve Our Human Problems, Pts. 1-3」

昨年12月から連続リリースされていた EP 三部作を纏めた編集盤。


全15曲69分。これを正規のフルレンスではなく3枚の EP に分割した意図は少々掴みづらいのですが、こうして1枚に纏められた収録曲をざっと眺めてみると、例えばかつての The Smiths の編集盤のように、もしかするとオリジナル作以上かとも思えるほどにバンドの本質を浮き彫りにしています。基本はやはり、従来の彼らの強みである素朴で切ないメロディを活かした上質インディポップの応酬。そもそもがフルレンスとしての全体の流れというものを意識していないだけに、楽曲それぞれが個別の役割を持ってはっきりと粒立ち、独立したまま一枚の盤に共存しているような、それこそシングルコレクション的な充実した中身の分厚さ。その中にはまさかのベルセバドラムンベースかと少し驚かされる「We Were Beautiful」、彼らにしては随分と力強くアップリフティングな「Show Me the Sun」、彼らの近作での試みからそのまま地続きと言える70年代ディスコ風意匠の「Poor Boy」といったアクセントもあり、彼らがこれまでに見せてきた音楽性の総ざらい、なおかつそこからほんの少し踏み出した部分もあり、総じてベルセバの愛らしい魅力を十分に堪能できる好盤です。

Rating: 7.7/10



Belle and Sebastian - We Were Beautiful