パスピエ 「ネオンと虎」

半年ぶりのリリースとなるミニアルバム。


前作「OTONARIさん」においては正規ドラマーの脱退を逆手に取ってか、現行トラップミュージックへの接近を図ったと思われる大らかなグルーヴを取り入れた楽曲が目立ち、バンドが次なるステップへと進む予兆を感じさせる内容でした。対する今作はどうかと言うと、従来のパスピエのイメージをそのまま踏襲したシンセ・ポップロックがメイン。これは新しい試みに挑戦した前作からの反動なのか、どのような思惑があるのかが汲み取りづらいのですが、最初聴いた時は随分とずっこけてしまいました。もちろんどの曲にも何処となくエキゾチックで洒脱なメロディというパスピエらしい個性は活かされているし、終盤の思うさまファンク/シティポップに寄った「オレンジ」、奇妙な変調が不穏な空気感を醸し出す「恐るべき真実」といった変わり種もある。ただ明らかに未来を見据えている印象があった前作に比べると、今作での現時点で足踏みしている感にはどうも寂しくなってしまう。パスピエのような所謂ロキノン界隈の第一線に身を置くバンドがトラップに向かうというのは非常に面白味を感じていたもので。今はまだ試行錯誤の段階ということか。

Rating: 5.4/10



パスピエ - ネオンと虎, PASSEPIED - Neon & Tiger

アーバンギャルド 「少女フィクション」

少女フィクション (豪華盤)(DVD付)

少女フィクション (豪華盤)(DVD付)

2年4ヶ月ぶりとなる8作目。


例えば古くから人間椅子だったり POLYSICS だったり、デビュー時にどれだけ色モノだとかすぐ消えるだとか言われようが、最終的には生き残ったものが正義なのだという事例。何せやりたいこと、目指すところが最初からバッチリ決まってるもんで、あとはそれを直向きに突き詰めていくだけ…と言葉にするのは簡単ですが、自分が心に決めたものをとことん突き詰められる精神力というのはこちらの想像を絶する厳しさなのかもしれません。彼女らもいつの間にやらデビュー10周年。今回の新作を聴いても思いましたが、本当に変わらない。もはや変わりようがないという感じか。フレンチポップ風味のメロディにゴテゴテしたシンセやバンドサウンドを組み込み、リビドーやらメンヘラやら戦争やらのモチーフを盛り込んでさらにゴテゴテと化した、アーバンギャルドとしか言いようのない味。彼女らは10年前と同じように痛々しく、10年前と同じように刺激的なまま。この有効な濃度を保ったままマンネリズムをひとつのイズムとして成立させるというのは、もはや生まれつき業を背負った者でなければ無理なのだろうなという気がする。10周年おめでとう。

Rating: 7.5/10



アーバンギャルド - あたしフィクション URBANGARDE - ATASHI FICTION