TAMTAM 「Modernluv」
- アーティスト: TAMTAM
- 出版社/メーカー: Pヴァイン・レコード
- 発売日: 2018/06/06
- メディア: CD
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レゲエを一番の軸としながら、そこにラウンジテイストや R&B のアーバンな空気感、また生音にはポストロック的プロダクションも取り入れて独自のポップソングを展開していた彼ら。この作品でもそういった種々の音楽要素を蓄えつつ、曲調的には幅の広さを敢えて絞っており、アンニュイな夜の雰囲気を醸し出すようなレイドバック感の強い楽曲が多く揃っています。リード曲「Esp」や「Sorry Lonely Wednesday」ではゲストに男性ヴォーカルを迎えてのメロウな歌心がしっとりとした深い味わいを生み、小気味良いファンキーなグルーヴが効いた「Morse」「Fineview」、またスペーシーな音響空間を展開して実験的試みも見せる「Dejavu」「Nyhavn」と起伏の豊かなアルバム構成。しかしながら聴き終えた後の印象としては、むしろ落ち着いたテンションやドリーミーな心地良さが一貫しているためか、全体的に良い意味で密室的と言うか、ダンスフロアよりもベッドルームでの鑑賞が似合うような内に籠った感覚が強い。かつてメジャーシーンでパワフルな気を吐いていた頃はすっかり遠い昔という感じで、マイペースに自らの趣味的領域を突き詰めた濃密な内容です。
Rating: 7.7/10
serpentwithfeet 「soil」
- アーティスト: SERPENTWITHFEET
- 出版社/メーカー: SECRC
- 発売日: 2018/06/08
- メディア: CD
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何か今までに見たことのない怪物を目前にした時のような心地がある。それは別に彼の強烈なヴィジュアルだけを指しているわけではなく、実際の音楽を聴いてみても、彼がすでに規格外の存在であるということはひしひしと伝わります。聖歌隊出身というバックボーンをフルに活かしたゴスペル由来の歌声は、底知れないパワーと同時にしなやかな美しさを兼ね備え、それがダークで前衛的なエレクトロニクスと結び合うことで、まるで新種のゴシック・アートとでも言うべき重厚な空気感が生まれています。そこには敬虔な聖性も少なからず感じられるのですが、歌詞に目を向けてみるとむしろ曲調とは真逆を行くくらいに、生々しく泥臭い。この作品で描かれていることの多くは他者への愛情の希求、または自身からの愛情の放出。それも自らの人生全てを捧げ、愛情を与えることが自らに課せられた責務であるというほどに、あまりにも深く痛々しい。例えば Björk や ANOHNI を聴く時と同じ類の衝撃がありつつ、下手すればそれらよりもさらに赤裸々な衝動に駆られ、もはや狂気的なものすら感じる。このエモーションはいったい何をどうすればここまで湧き出すのか。
Rating: 8.5/10