Ty Segall & Whtie Fence 「Joy」

Joy

Joy

US 出身のシンガーソングライターによる、約6年ぶりコラボ2作目。


Ty Segall は今年に入って2作目のフルレンス。相変わらず何処からそんなにインスピレーションが湧いてくるのかという多作っぷりですが、今回の作品はまたこりゃ判断に困るものを…という感じで大きく首を傾げてしまいました。内容は15曲30分。アコギでつるりと始まるフォーク調の楽曲から、グシャリとひしゃげたディストーションを叩き付けるガレージパンクまであり、中には1分未満の楽曲もちらほら。それらに共通するのは音の裏側からツンと匂い立ってきそうな毒々しいサイケ感。優しい曲でもやかましい曲でも、フワフワと視点の定まっていなさそうなトリップ感が空気の中に滲み出ており、聴いているだけでこちらまで脳から酸素が抜けていきそうな心地になる。Ty Segall の作品にはいずれにもそういったサイケ要素というのは含まれていましたが、今作は特にアイディア以上楽曲未満というような短尺のトラックが多く詰め込まれている構成なだけに、そのフリーフォームっぷりが際立ってサイケの濃度も余計に煮詰められている気がします。このB級感はきっと数十年後に好事家に発掘されたのち新たな意味合いでもって再評価されることでしょう。多分。

Rating: 6.8/10



Ty Segall & White Fence "JOY" Commercial

D.A.N. 「Sonatine」

Sonatine※初回盤(2CD)

Sonatine※初回盤(2CD)

2014年結成の3人組による、2年3ヶ月ぶり2作目。


「TEMPEST」をリリースした時はこのままどんどんディープに自分達の核を突き詰めていくのかと思っていたら、今回はむしろ横幅の方を増してきた印象があります。低めの BPM で淡々とミニマルにグルーヴを生むリズム隊、水の中に漂うような冷たさと浮遊感を醸し出す空間的なシンセ類、そういったアンサンブルの基本的な骨格は変わらず。その上で「Chance」は少しばかりヴォーカルが前に出て重厚さが増した感があり、逆に「Sundance」はファンキーなベースラインの躍動感が主張して、クールな雰囲気の中にライトな陽気さが差し込まれてる。中には珍しく疾走感のあるインスト小品「Cyberphunk」のような遊び心を感じる曲まであったり、試しに色々やってみようという姿勢にはある種の余裕が生まれてきたように見えます。その一方でアルバム後半に入ると音の密度は少しずつ濃くなり、10分を超える「Borderland」ではジワジワと熱を帯びるように展開していくストイックな演奏、そこに生まれる世界観の深みは更なるピーク値を更新しています。期待していたほどの飛躍は感じなかったというのが正直なところではありますが、中毒性は十分にあると思います。

Rating: 7.0/10



D.A.N. - Chance (Official Video)