Thom Yorke 「Suspiria (Music for the Luca Guadagnino Film)」

Suspiria(Music for the Luca Guadagnino Film) [輸入盤 / 2CD] (XL936CD)

Suspiria(Music for the Luca Guadagnino Film) [輸入盤 / 2CD] (XL936CD)

ホラー映画「サスペリア」リメイク版のサウンドトラック集。


今作を聴くに当たって Goblin が手掛けた元ネタの「サスペリア」も聴いてみましたが、当たり前のように全く別物でした。ダイナミックで外連味の強い中に何処となくB級感が漂う、良くも悪くも70年代プログレならではのサウンドとは打って変わって、こちらはアンビエントやポストロック、ポストクラシカルまでの要素を内包し、仄暗い静寂の中から徐々に恐怖感を煽っていくアプローチで、聴く人によっては「サスペリア」のイメージをガラリと塗り替えられてしまうかもしれません。ピアノやシンセ、ストリングスなど種々の音色が柔らかく折り重なり、湿度の高い瘴気と化した楽曲が緊張の糸を緩めないように連結され、要所要所にトム本人のファルセット・ヴォイスを活かした歌モノが挟まれるという構成。多くの楽曲がリズムレスなのもあって閉塞的な空気感が全体に蔓延し、強固なトータリティを保持。その中で Radiohead 本隊と比べても遜色ない「Suspirium」や「Unmade」の美しさが特に際立っているというのもあり、単純なサントラと言うよりも「サスペリア」を主題としたトムのコンセプトアルバムという印象が強いです。ソロ作の中では一番濃密な聴き応え。

Rating: 7.6/10



Thom Yorke - Suspirium

sads 「FALLING」

約8年ぶりとなる7作目。


奇しくもこの記事を投稿した本日10月30日は、清春の50歳の誕生日です。今年一杯で活動を停止するサッズに対して、清春はいつもの身も蓋もないほどに飾らない言葉で、現時点での思いをインタビューで語っていました。曰く、50を迎える自身がやるべきことはソロワークであり、バンドとしてやれることはもうやり切ったと。確かにここ数年の清春は特にアコースティック・スタイルへ力を注いでおり、彼のヴォーカルの魅力を際立たせつつ、さらに深い渋味のある表現へと移行していました。今やバンドは自分にとって挑戦的なことではない、そう言い切った彼にとってこのラスト作は、せめて綺麗な幕引きを飾ろうというある種のけじめなのかなと思います。現サッズならではの逞しいヘヴィネスに、以前よりもいくらか音圧の強まったシンセ類。ただアグレッシブな速度ではなく、メロディの憂いを中心としたミディアム曲が多く並んでおり、ヘヴィロックに今の清春が目一杯寄せられるとしたらここ、という塩梅。鮮烈なダンスナンバー「smily sadly」などを聴くと、まだバンドにも伸び代は残っているのではという一抹の寂しさも浮かびますが、引き際は大事ですからね。

Rating: 7.0/10



sads「freely」MUSIC VIDEO