KID FRESINO 「ài qíng」

ai qing

ai qing

玉出身のラッパーによる、3年ぶり3作目。


昨年の EP 作「Salve」からスティールパンを含めたバンドセットによる生演奏で新境地を開拓していた彼。この作品ではそうしたヒップホップの外界を見つめた楽曲がありつつ、Seiho や BACHLOGIC などのエレクトロトラックに盟友ラッパーがゲスト参加した、言わばヒップホップとしての最前線を行く楽曲も共存し、様々なベクトルで急進的な姿勢をアピールする内容に仕上がっています。ただ個人的に前者のバンド曲に関しては、スティールパンの音色がバンドに十分に馴染んでいるようには見えず、アンサンブルに不可思議な広がりを与えているのは分かりますが、主張が少々強すぎて扱いを持て余しているような印象を受けました。なので自分のお気に入りはもっぱら後者、トラップとグライムの中間を行くようなスピード感が刺激的な「Cherry pie for ài qíng」、4つ打ちの直線的なグルーヴに対するフロウの自由さが光る「Fool me twice」、ケンモチヒデフミのエキゾチックな持ち味が効いた「Way too nice」あたり。ただ独自性や伸びしろを感じるのはどちらかと言われるとバンド編成の方だったりするので、なかなか複雑なところ。佳曲は多く揃っているのですが。

Rating: 7.1/10



KID FRESINO - Coincidence (Official Music Video)

COALTAR OF THE DEEPERS 「RABBIT EP」

RABBIT EP

RABBIT EP

7年ぶりのリリースとなる EP 作。


シューゲイザーを筆頭に、オルタナティブやメタルなど種々の要素を混ぜ込んだギターサウンドこそが COTD の一番の特徴かと思いますが、この新作ではほとんどシューゲイザーに特化。不協和音を含んだ複雑なディストーションの中に暖かみや美しさを湛えた音作りは、(おそらく)日本最古のシューゲイザーバンドとしての矜持、あるいは余裕すら感じるもの。しかしながら単純な90年代リバイバルには終わらず、ギター以外の面においては様々な試みがなされています。「HALLUCINATION '18」では敢えてのチープさを狙ってか Kraftwerk 風味の4つ打ちシンセポップが、「SUMMER GAZER '92」では表題そのままのリゾート感に満ちたラテンハウスが導入されており、いずれもギターの醸し出す幻惑的な浮遊感に絶妙にマッチ。王道から少しのズラしを見せるこのユーモラスなセンスも NARASAKI 独特のものと言えるだろうし、すでに手法が定まりきったように見えるジャンルでも、やりようによってはまだまだ新しい風を吹き込むことが出来るという、ある種のメッセージも裏側に透けて見える。これが長い間ご無沙汰のアルバムへの布石となるのだろうか。

Rating: 8.0/10



COALTAR OF THE DEEPERS - SUMMER GAZER '92 (Official MV)