DAOKO 「私的旅行」

1年ぶりとなる6作目。


前作「THANK YOU BLUE」では D.A.N. や Tempalay といった新進気鋭のインディバンドを起用したりしていたのが、今作ではボカロPに加えて小林武史中田ヤスタカ水野良樹いきものがかり)の楽曲提供、さらに「打上花火」のソロ再録まで合わせて、もうオーバーグラウンドに向けてガッツリ売る気満々の姿勢。この方向性の転換については良くも悪くもという感じで、前作では正直 DAOKO のヴォーカリストとしての個性が完全に曲に負けてると感じていたのですが、ここではクールな佇まいとは裏腹の柔らかくガーリーな声質を上手く活かし、J-POP としてアルバム全体に一本の筋が通った内容にはなっています。ただトラックの先鋭性やヒップホップとしての面白味はほとんど放棄されてると言って良い。まあ元からラップスキルを売りにしている人ではなかったけれど、ここまできたらラップパートの取って付けた感が際立ってしまって、全体的に絶妙な吹っ切れてなさを感じてしまうのは相変わらず。コラボの名前に頼らずに誰かひとり総合的なプロデューサーがついた方が良いと思うのだけど。あと今年の紅白決まったけどそんな目立つことしてた?

Rating: 4.2/10



DAOKO × 中田ヤスタカ「ぼくらのネットワーク」MUSIC VIDEO

大槻ケンヂミステリ文庫 「アウトサイダー・アート」

アウトサイダー・アート

アウトサイダー・アート

大槻ケンヂを中心とする新プロジェクトのデビュー作。


メインコンポーザーはタカハシヒョウリ(オワリカラ)と特撮からの盟友である高橋竜。帯にもあるようにジャジー、ファンキー、ブルージーな音楽性を軸としつつ、オーケン自身はポエトリーリーディングをいつもより多めに交え、名前にもある通りミステリをテーマとした世界観を展開、というもの。まず最初に思い出したのはかつてのオーケンのソロ作品や電車の頃の楽曲でした。筋肉少女帯だと HR/HM 、特撮だとモダンなヘヴィロックのフィルターを通過することが多いため、今作のような肩の力の抜けた演奏だと歌詞世界の見え方もまた一味違ってきます。「探偵はBARにいてGHOSTはブレインにいる」「スポンティニアス・コンパッション」などは今回のコンセプトだからこそ生まれ出たものだし、何処かノスタルジックな雰囲気の「去り際」「美老人」にしても、こういったのほほんテイストのオーケンは最近少なかったと思うので、やや新鮮な感もあったり。何ならもっとガッチリ設定の定まったコンセプトアルバムにしても良かった気もするけど、周期的に訪れるオーケンの息抜き活動は、こちらもたまに手に取りたくなるものですよね。

Rating: 6.5/10



「ぽえむ」 MV / 大槻ケンヂミステリ文庫 12/5発売 1stアルバム「アウトサイダー・アート」より