Beirut 「Gallipoli」

Gallipoli [解説・歌詞対訳付 / 国内盤] (4AD0121CDJP)

Gallipoli [解説・歌詞対訳付 / 国内盤] (4AD0121CDJP)

米国サンタフェ出身の大所帯バンドによる、約3年半ぶり5作目。


今作に限らず、彼らの曲名には様々な国の土地名が冠せられていることがよくあります。バンドの中心人物 Zach Condon は世界中を放浪しながら、その土地ごとのトラディショナルな音楽と触れ合うという経験が創作活動の根幹にあるため、必然的に楽曲の世界観にもそういった旅人としての光景が反映されているのだと思います。今作もニューヨーク、イタリア、ベルリンといった多くの場所でのセッションが収録されているとのことで、ストリングスやホーンセクション、オルガンなど多彩な音色のハーモニーが詰め込まれた、Zach 流ごった煮フォーク/ワールドミュージックの応酬。前作「No No No」が比較的シンプルな編成/アレンジを志向していたのに対し、今回は揺り戻しが起こって音響的にも空間を埋めていくタイプの楽曲が多く、彼らならではのノスタルジックで気品のある音楽性が、さらに年月を経て滲み出たような深い渋味を見せています。全体的な方向性としては良くも悪くも大きな変化は見られませんが、国籍も時代も飛び越えた、Beirut でしか味わえない個性という点では安心できる内容です。

Rating: 7.4/10



Beirut - Landslide (OFFICIAL VIDEO)

Swervedriver 「Future Ruins」

FUTURE RUINS

FUTURE RUINS

英国オックスフォード出身の4人組による、約4年ぶり6作目。


前作「I Wasn't Born to Lose You」もそうでしたが、90年代シューゲイザー代表格のひとつである彼らであっても、最盛期からの解散、再結成を経て、30年近くものキャリアが重なれば多少なりとも変化はするだろう、ということで往年の代表作「Raise」や「Mezcal Head」での青臭く溌剌とした疾走感から、丹念に熟成されたミドル/スロウ曲へと主軸が変化し、曲を聴いているだけでもその年月の厚みが感じられて何だか遠い目になってしまいますね。そういった変化に対して寂しさを感じないわけではないですが、しかしながらこれはこれでまた、英国産ならではのロックサウンドとして十分聴き応えのある内容だと思います。歪みやクリーンなど音色を巧みに変化させるギターサウンド、その演奏のひとつひとつはラフな感触なのですが、それらが重なって少しずつ層を形成し、やがて濃密な音の塊へと膨れ上がっていくアレンジの緻密さ、繊細さはさすが熟達者の手腕といったところ。はっきり言って目新しいことは何一つとしてやっていません。けれどもこれだけ自らのスタイルに対して潔い信念があれば目新しさなど不要だという、説得力のある渋味に満ちた内容です。

Rating: 7.1/10



Swervedriver - Spiked Flower