Sightless Pit 「Grave of a Dog」

Grave of a Dog

Grave of a Dog

  • アーティスト:Sightless Pit
  • 発売日: 2020/02/21
  • メディア: CD
米国出身の3人組による初フルレンス。


バンドを構成するのは Lee Buford (The Body) 、Dylan Walker (Full of Hell) 、そして Lingua Ignota こと Kristin Hayter 。現代のヘヴィメタル界隈の中でも特にノイズ/インダストリアル方面への造詣が深く、エクスペリメンタル志向の強い急進的な御三方が勢揃いというわけです。なのでもちろん狂気迸る漆黒のノイズアートが展開されているわけですが、単純にメンバー各々の本隊で見せていた音楽性の足し算では終わっておらず、そこから一歩外に踏み出した仕上がりになっていると思います。胸の内に巣食う膿が噴出したかのような攻撃的ノイズ、デスヴォイス、それらはエレクトロニックな音響空間を構築するためのテクスチャーの一部として加工されており、圧の強さを感じさせつつもグッと洗練された印象がある。また緊張感を煽る不整脈のようなビートや、時折挟まれるゴシック調のピアノにしても、隙間の無音を程良く活かした奥行きのある音像で、禍々しさばかりではないクールな知性が確かに感じられる。三位一体のコンビネーションの良さが発揮されたリード曲「Kingscorpse」は特に切れ味が鋭く、そこから終わりに至るまで全く出口無しの瘴気を堪能できます。

Rating: 7.3/10



Sightless Pit 'The Ocean of Mercy' Music Video

Pantha du Prince 「Conference of Trees」

Conference Of Trees

Conference Of Trees

ドイツ出身、Hendrik Weber によるソロユニットの3年10ヶ月ぶり5作目。


「木々の会談」という表題が示す通り、木琴、チェロ、そして自作の木製オリジナルパーカッションなどを使用し、徹底的に "木" という材質の鳴りに着目した今作。特に前半部ではこれまでのミニマルテクノの作風から一気にアンビエントへ舵を切り、木製楽器のオーガニックな響きを駆使した神秘的な音響空間が構築されています。冒頭「Approach in a Breeze」からして10分超の大曲なのですが、静謐、ノスタルジア、また畏怖の念すら抱かせる聖性が満ち溢れ、頭の中はすっかり漂白されているような心地に。しかし柔らかな4つ打ちキックが入る「When We Talk」からは様相が変わり、彼本来の持ち味であるダンスプロパーなシンセサウンドが徐々に台頭。グルーブの盛り上がりに合わせて全体の雰囲気は不穏さを増していき、「The Crown Territory」に至っては新種のダークウェーブとも捉えられる仕上がりで、序盤の方向性と比較するとかなりポップな印象がある。これを曲調の幅広さと取るかコンセプトのブレと取るかは人次第でしょうが、個人的には前者寄り。緩急をシフトするバランス感覚がスリリングかつ絶妙で、自然に音の迷宮へと没入できます。

Rating: 8.0/10



Pantha du Prince - Pius in Tacet (Official Video)