Car Seat Headrest 「Making a Door Less Open」

米国ヴァージニア出身の4人組による、2年3ヶ月ぶり12作目。


またえらく奇妙なアルバムが出てきました。これまで見せていたエモ/オルタナティブの荒々しさは後退し、代わりに台頭してきたのはエレクトロポップサウンド。ロックバンドがシンセ類を取り入れるという点については、それこそ何十年も前から様々なアクトが試行錯誤を繰り返してきたわけで、変化の道筋としては決して目新しいものではありません。ただ今作の場合は…バンドの中心人物 Will Toledo は EDM やヒップホップから影響を受けて制作したと発言していますが、彼の持つフィルターはかなり強固なようで、出来上がったのはダンサブルな快楽とは程遠いローファイ感バリバリの代物。そのぎこちなく組み上げられた音像は、彼が以前から表現しているモラトリアムの鬱屈をより深刻に拗らせた様相に仕立てており、コミカルな音の鳴りが妙に不穏な、ともすれば悲壮感を帯びたものにも感じられる。そうしたサウンド面に加え、ガスマスクと防護服を身に着けてトリックスター然と振る舞う彼の姿は、素の自分をひた隠そうとする痛切さがむしろ生々しく表出しているように見えます。従来の牧歌的なメロディセンスこそ健在なものの、背後の毒気はなお強いものに。

Rating: 8.1/10



Car Seat Headrest - "Hollywood" (Official Music Video)

Age Factory 「EVERYNIGHT」

EVERYNIGHT

EVERYNIGHT

  • アーティスト:Age Factory
  • 発売日: 2020/04/29
  • メディア: CD
奈良出身の3人組による、約1年半ぶり3作目。


以前にも増して生理的と言うか、プリミティブで剥き出し、という印象を強く受けました。エモ/オルタナティブ由来の粗野で開放的なサウンドは、アンサンブルの一体感が増したことでさらにタイトに引き締まった感があり、メロウな渋味を滲ませるセンスにもより一層磨きがかかっています。そして楽曲のほとんどは3分未満にまで無駄が削ぎ落とされ、鳴らすべき音、歌うべき言葉のみを残すという照準がはっきりと研ぎ澄まされてる。ただメンバーの音楽的志向はやや拡散傾向にあるようで、「CLOSE EYE」~「Easy」の中詰は明らかに他の楽曲とは一線を画しています。エモを通り越してメタルの領域にまで鍛え上がった歪みと、ヒップホップから影響を受けたが故のキナ臭い緊張感。特に「CLOSE EYE」などは Rage Against the Machine をストレートに連想させる作りで、新世代のミクスチャースタイルを打ち立てようという気概がありありと。ただそれらが前後の叙情的な楽曲と有機的に結びついているかは少し疑問で、作品全体としては現在の興味の矛先を力業で一枚に纏めた、言わばプレイリスト的な側面が強い。その辺の手付きも含めて直感的、生理的だなと。

Rating: 7.6/10



Age Factory "Dance all night my friends" (Official Music Video)