Car Seat Headrest 「Making a Door Less Open」
Making A Door Less Open [解説・歌詞対訳付 / 国内盤] (OLE1571CDJP)
- アーティスト:Car Seat Headrest,カー・シート・ヘッドレスト
- 発売日: 2020/05/01
- メディア: CD
またえらく奇妙なアルバムが出てきました。これまで見せていたエモ/オルタナティブの荒々しさは後退し、代わりに台頭してきたのはエレクトロポップサウンド。ロックバンドがシンセ類を取り入れるという点については、それこそ何十年も前から様々なアクトが試行錯誤を繰り返してきたわけで、変化の道筋としては決して目新しいものではありません。ただ今作の場合は…バンドの中心人物 Will Toledo は EDM やヒップホップから影響を受けて制作したと発言していますが、彼の持つフィルターはかなり強固なようで、出来上がったのはダンサブルな快楽とは程遠いローファイ感バリバリの代物。そのぎこちなく組み上げられた音像は、彼が以前から表現しているモラトリアムの鬱屈をより深刻に拗らせた様相に仕立てており、コミカルな音の鳴りが妙に不穏な、ともすれば悲壮感を帯びたものにも感じられる。そうしたサウンド面に加え、ガスマスクと防護服を身に着けてトリックスター然と振る舞う彼の姿は、素の自分をひた隠そうとする痛切さがむしろ生々しく表出しているように見えます。従来の牧歌的なメロディセンスこそ健在なものの、背後の毒気はなお強いものに。
Rating: 8.1/10