PATRICK WOLF 「THE BACHELOR」

The Bachelor

The Bachelor

ロンドン出身のシンガーソングライターによる4作目。初めて聴きました。


粘っこくて弾力のある打ち込みビートの上をギター/ヴァイオリン/チェロ/ピアノ等々多種多様な音色が舞い踊り、さらに本人のヴォーカルがダークかつ妖艶なメロディを表情豊かに歌って、架空ミュージカル映画のごとくシアトリカルな音世界を展開。その様はエナメル質ボンデージが正装の刹那的/背徳的な情熱を滾らせつつ、終末に向かう時の悲しみや緊張感にも満ち溢れており、エロティシズムが単なる下世話に陥らず深遠な奥行きを生み出しています。 「Hard Times」 「Oblivion」 といったキッチュな現代版ニューロマポップに始まり、壮大なクワイアが印象的な 「Damaris」 「Who Will?」 などの中盤以降に至っては荘厳な力強さすらも見せ、ドラマチックな妄想世界を構築することに一点の迷いも見当たらない。まるで岡村靖幸Gackt を足して割るどころかさらに密度10倍に煮詰めたような、真夜中のストリップショウが戦争規模にまでスケール膨張してしまった濃厚セクシャルファンタジー絵巻です。聴いてるうちにその世界に飲まれてしまいそうな強烈さがあり、さらに強烈なのはこれが二部作の前半ってところ。続くのかこれ。


Rating: 8.4/10
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