Julianna Barwick 「Nepenthe」

Nepenthe

Nepenthe

ブルックリンを中心に活動するシンガーソングライターの、2年半ぶり2作目。


今作のレコーディングで彼女はアイスランドへと渡り、 Jónsi (Sigur Rós) のパートナーである Alex Somers や Múm のメンバーが参加したということで、これはもはや彼女にとって鬼に金棒と言えるタッグでしょう。ひとり多重コーラスによるあまりにも清らかなハーモニー、天鵞絨のように優しく包み込む繊細な音響空間はすでにニューエイジ・ミュージックの枠組みに括られていて、しかし単なる癒し系の安っぽさには陥らない荘厳な聖性を放っています。そういった彼女本来の持ち味がアイスランド独自の磁場から影響を受け、ストリングスやピアノなどの生音も境目なく声の重層へと溶け込み、その世界観はますます強固さを増しています。序盤の 「The Harbinger」 「One Half」 あたりでは比較的分かりやすいメロディが顔を覗かせますが、それが一切の外連味や俗っぽさを感じさせることなく全体の敷居を下げて聴き手を入り込みやすくしている、このバランス感覚には唸らされます。ちょうど Sigur Rós で言えば 「()」 あたりが近いでしょうか、あの冷たさに覆われた暖かさとでもいうようなドラマチックな感覚が、この作品にも少なからず秘められてると思います。

Rating: 8.4/10