椎名林檎 「日出処」

ソロ名義としては5年5ヶ月ぶり5作目。


ライナーによると最近の彼女は 「もう王道のことしかしたくない」 とのことで、そもそも彼女の言う 「王道」 に打ちのめされていた自分としては何とも美味なる発言。東京事変の後期もそうでしたが今作はその流れを受け継ぎ、オルタナロック歌謡という彼女本来の出自に立ち帰ったストレートな楽曲が多く揃っています。ガシャガシャと荒々しいバンドアンサンブルに、スレた下世話さと煌びやかな上品さが同居する林檎嬢のヴォーカル。ホーンやストリングスといったムーディな装飾もあくまでバンドサウンドを基盤にした使い方で、良い意味でインチキ臭さがあるのですよね。これこそが林檎本来の味じゃないかと。なので原点回帰とも言える内容ですがそこはやはりキャリアを長く積んでるだけに、痛みや危うさといった感覚よりもどっしりした度量の深さ、安定感を第一に感じます。終盤の 「NIPPON」 から 「ありあまる富」 に至るカタルシスなどライブ感ある流れも痛快だし、ドンシャリの音質や徹底した曲間排除など細かい点も含め、これぞ椎名林檎と呼ぶに相応しい現代の歌謡エンターテインメント。

Rating: 8.0/10



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