Wolves in the Throne Room 「Celestite」

Celestite

Celestite

ワシントン出身の2人組による、2年10ヶ月ぶり5作目。


そもそもはブラックメタルバンドであった彼らなのですけど、この作品ではそのブラック要素はほとんど抜け落ちてしまっています。透明感あるシンセサウンドや環境音的ノイズ、あるいはホーンやフルートといった管弦楽器などを駆使し、アトモスフェリックな音の重層が空間を埋め尽くすドローン/アンビエント。ミステリアスな浮遊感に満ちたムードの中、輪郭を持たない重厚なテクスチャーがグラデーションのように移ろい行く、美しくも不安定で茫洋とした世界観を展開しています。時にはメタリックな轟音が黒い雷雲のように現れる場面もありますが、それもあくまで音世界を構築する要素の一部。リズムは皆無に等しいし、かつてのヘヴィな轟音とは全く質感が違います。例えば Aphex Twin の暗黒アンビエントGodspeed You! Black Emperor の嵐の前の静けさ的な部分のみを抽出配合した感じで、まるで宇宙の片隅に身体を投げ出されてしまったかのような感覚。良くも悪くも思いっきり実験に走っていて、むしろ彼らの本筋からは逸れたスピンオフ的な作品のようにも思えるのですが、波長さえ合えば底無しの陶酔感を味わえる内容だと思います。

Rating: 6.6/10