2010年代前半ベストアルバム50選 (邦楽編)

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2010年代に入り、自分は三十路を迎えました。あまり信じたくはないです。




皆様明けましておめでとうございます。2010年代に入ってからも飽きもせず音楽を聴いてはブログを更新し続けている30男であるところの俺です。さすがに昔みたいにスポンジのように様々な物事を吸収し、心の底から衝撃を受けるといったことは難しくなってきましたが、それでも色々と聴き漁ってみれば面白い音楽はいつの時代も存在するものです。相変わらず浅く狭くな聴き方をしてはおりますが、以前とは好みが若干変わった部分もあり、昔から変わらない部分もあり、あと年食ったからか以前よりも好き嫌いの境目がハッキリしてきた気もします。ということでここ5年の間に聴いた音楽の中からベスト50枚を選出したいと思います。まずは邦楽編からどうぞ。




50. LIPHLICH 「SOMETHING WICKED COMES HERE AGAINST YOU」

SOMETHING WICKED COMES HERE AGAINST YOU

SOMETHING WICKED COMES HERE AGAINST YOU

ダーク、オサレ、メタル、昭和歌謡…それぞれの要素を内包しつつそのいずれでもない、独自の美意識を持って活動する4人組ヴィジュアル系バンド。洒脱でデカダンなムード、皮肉めいたユーモア、そして清春の遺伝子を感じさせるキナ臭さとセクシーさの共存。この初フルレンスにして不敵な魅力が感じられます。

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49. 喜多村英梨 「RE;STORY」

RE;STORY

RE;STORY

前半はガールズ版 V-ROCK と言っても差し支えないメタルポップナンバー連発、そして後半は人格が入れ替わったように Kawaii アニメソング篇。なんだかんだで俺は結局この手のヒロイックな歌唱スタイルに熱くなってしまうのでした。何より本人がこの 「役」 をノリノリで演ってるのが良い。すでに堂に入ってる感がありますね。

https://itunes.apple.com/jp/album/re-story/id542593465




48. 女王蜂 「孔雀」

孔雀

孔雀

とある対バンライブで何の予備知識もなく彼女らに出逢ったというのは、今考えても幸福なケースだったと思います。激しい音圧を放つダイナミックなアンサンブルと、様々な趣向を凝らした楽曲アレンジ/パフォーマンスで常に聴衆を驚かせてくれる、真のライブバンドのひとつ。今現在が最も輝くように全てを刹那に捧げる、ある種正しいロックバンドの形。

女王蜂 『デスコ』 - YouTube




47. MELT-BANANA 「Fetch」

Fetch

Fetch

持ち前の超エッジィなアグレッションが音響効果による恍惚感も携え、縦横無尽にドライブするローラーコースターのごときスラッジ・ポップ・アサルト。 Yako 嬢のハイトーンヴォイスは昔からまるで衰えることを知らないですね。90年代のデビュー時から色褪せることのないピュアな原石。 「Cell-Scape」 に次ぐ傑作です。

"The Hive" PV - MELT-BANANA - YouTube




46. ときめき☆ジャンボジャンボECLAT

Eclat

Eclat

こちらは大阪の4人組。何かとシリアスだったりヘヴィな表現に行きがちなポストロック界隈において、ファンタジックで夢見心地な世界観を提示した新鋭です。まるで童話のようなノスタルジックで可愛らしい楽曲群、それは裏側にストレンジな闇も孕んでおり、一筋縄ではいかない。関西出身らしいいなたさも含めて愛すべき存在です。

ときめき☆ジャンボジャンボ「マーブルナイツ!」 - YouTube




45. fripSide 「infinite synthesis 2」

テン年代に入ってから本格的にその頭角を現してきた八木沼悟志。90年代エイベックスマナーに則ったトランスポップばかりを偏執的なまでに作り続け、作品毎にその密度を高めている彼の現時点での最高到達点です。聴き続けているうちに彼こそが J-POP シーンの最たる良心なんじゃないかって錯覚するくらいには徳が高まりました。

【fripSide】アルバム「infinite synthesis 2」TVスポット - YouTube




44. DISH 「春と訣別と咲乱」

春と訣別と咲乱

春と訣別と咲乱

どこぞのアイドルバンドではなく、現在はソロユニット状態となっているヴィジュアル系です。オルタナ寄りのザラついた激しさを振り撒きながら、吉井和哉などにも通じるネチっこい情念を漂わせるジャパニーズロック。影響元に挙げているのが COTD 、スマパン、キュアーという点からも、このバンドがいかに信頼できるかが汲み取れるというもの。

メロウイエロウ - YouTube




43. the cabs 「再生の風景」

再生の風景

再生の風景

すでに解散済みの彼らが残した唯一のフルレンスは、複雑なフレーズを畳み掛けるハイレベルな演奏技術とは裏腹に、ひどく不器用な印象を受けます。それは等身大の真っ直ぐな歌声が自らの内面を抉るようにして、目に映る世界への疑念や失望をリリカルに綴る、生きることに対しての不器用さ。コールタールのような鬱屈した感情が、朝の光を受けて冷たく輝くよう。

the cabs"anschluss" - YouTube




42. 豊崎愛生 「Love letters」

個人的に初めて彼女の声を聴いた 1st の衝撃も捨てがたいんですが、楽曲の充実度で言えばこの 2nd の方に軍配が上がるかなと。安藤裕子Charaハナレグミといった盤石の作家陣によるバラエティ豊かな楽曲の中で、彼女のヴォーカルは順当に表現力を増し、伸び伸びと翼を広げています。普段は日向のように優しく甘い歌声が、時には幻想的に、蠱惑的にもなる。

豊崎愛生 Love letters - YouTube




41. 辻隼人 「狂子先生」

狂子先生

狂子先生

真の意味でオルタナティブな作品というものは、聴いている姿を他人には見られたくないもの、ベッドの下にでもひっそり隠しておきたいもの、ではないかなと思います。異論は認めますが、この作品を一部分のみサラリと聴くだけでも、その 「オルタナティブ」 で在ろうとする衝動、苦悩、真摯さというものは十分感じられるでしょう。

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40. 川本真琴 feat. TIGER FAKE FUR 「音楽の世界へようこそ」

音楽の世界へようこそ

音楽の世界へようこそ

ファンキーなアコギのカッティングに乗せて淡い恋心を歌うというかつての姿はすっかり遠くなり、ここにあるのは至って素朴でオーソドックスなポップス。しかしながらそれは単に落ち着いただけではなく、無邪気に弾けていた (ように見えた) 以前よりもさらに自由で伸び伸びとした印象を受けます。淡くカラフルに彩られた、音楽の世界という日常。

川本真琴 feat. TIGER FAKE FUR/アイラブユー - YouTube




39. ねごと 「ex Negoto」

ex Negoto

ex Negoto

当時まだ20歳そこらの彼女らが放ったこのデビュー作は、おそらくバンドを始めた当初からすでに意識的だったであろうポップであることへの貪欲さを、メジャーのフィールドに出ることで思い切り開放した気持ちの良い仕上がり。特に冒頭5曲がすべてキラーチューンというこの勢いは、やはり旬の脂が乗っている時期ならではですね。

ねごと - ループ [Official Music Video] - YouTube




38. Psysalia Psysalis Psyche 「#7」

#7

#7

シングル6作連続リリースの果てに完成した集大成的 2nd 。理知的なアイディアとロックンロールの衝動が詰まった楽曲群は、悪童たちの悪ふざけのようでもあり、既存の体制に反発するインディペンデント故のの拘りでもありました。渇望や葛藤、フラストレーションを持て余した新世代のレベル。そして聴衆を置いてけぼりにしてあっさり解散。

Psysalia Psysalis Psyche - 2.5D (full version) - YouTube




37. うみのて 「IN RAINBOW TOKYO」

IN RAINBOW TOKYO

IN RAINBOW TOKYO

頼りないローファイなバンドサウンドに乗せて歌われるのは、冷凍都市を無表情で往来する人々たちの悲喜交々。徹底してリアリスティックな傍観視線で、俺やあなたが気付かないふりをしている心の淵を炙り出す、ある種の踏み絵のようなアルバムです。何だかんだでやはり言葉が刺さる音楽は強いなと。ライブではそのエナジーはさらに暴走気味に。

うみのて - WORDS KILL PEOPLE (COTODAMA THE KILLER) MV - YouTube




36. BORIS 「NOISE」

NOISE (ALBUM+SINGLE)

NOISE (ALBUM+SINGLE)

ヘヴィメタル、ノイズ、ドゥーム、シューゲイザーから V-ROCK まで、その長く曲がりくねった道程を 「ノイズ」 の一言で集約してしまった力技の集大成。リリースが多岐に渡りすぎてなかなか全貌を掴み切れなかったボリスの姿を、ここでようやく把握できたような気がします。

BORIS "Vanilla"(official video) from the album "NOISE" - YouTube




35. 妖精帝國 「PAX VESANIA」

PAX VESANIA

PAX VESANIA

楽器隊のメタル要素をさらにビルドアップし、アグレッションを切れ味鋭く研ぎ澄ませた結果、独裁官ゆい様の Kawaiiness もより一層引き立つという理想的な結果に。これこそ日本でしか生まれ得ない音楽、クールジャパンと呼ぶべきこの国独自の文化ですよね。自分は 「Solitude」 だけで何杯でも飯が食えます。

https://itunes.apple.com/jp/album/pax-vesania/id619676315




34. パスピエ 「幕の内ISM」

このバンドも言うなれば 「相対性理論以降」 に属するバンドではありますが、よりオーバーグラウンドな平野を目標に定め、 JUDY AND MARY あるいは東京事変にも匹敵する鮮やかなポップネスを獲得するに至った、別ベクトルの知能犯。疾走感も派手さもキュートさもタフさもあり、ライブ感ある起伏に富んだ流れがエモーショナルの域にまで達している場面も。テン年代の急先鋒。

パスピエ - MATATABISTEP, Passepied - MATATABISTEP (Music Video) - YouTube




33. DE DE MOUSE 「A journey to freedom」

A journey to freedom

A journey to freedom

ゼロ年代の傑作 「tide of stars」 が表題通り月夜の美しさなら、こちらは長いトンネルを抜けた後の光のようなサウンド。得意のヴォーカルカットアップによる不可思議なメロディ精製テクを活かし、よりポップでダンサブルに、広いフィールドへと展開していこうというチャレンジングな精神が表れた傑作です。吉田明彦の手掛けたジャケットイラストからも夢と希望がいっぱい。

DE DE MOUSE アルバム「A journey to freedom」spot - YouTube




32. ZIGZO 「THE BATTLE OF LOVE」

THE BATTLE OF LOVE

THE BATTLE OF LOVE

切迫感に駆り立てられながらも、限られた今を生きる楽しさと切なさ、その重要さをしゃがれた声で歌う。男臭くワイルドでセクシーな、それでいて少年のような純粋さを隠さないロックバンド。長い年月の後に再び集まった彼らはそれぞれ紆余曲折を経てきたかと思いますが、それでも今なお大文字のロックバンドとして堂々とした姿を見せてくれる。なんて頼もしい。

ZIGZO「I'm in Love」 - YouTube




31. XINLISUPREME 「4 BOMBS」

4 ボムズ

4 ボムズ

リリース当時完全にスルーしていた己のアンテナの低さを呪わずにはいられない。10年の歳月をこの5曲のために注ぎ込み、内なる衝動を最大限に引き出すことに成功した、 J-POP の究極型のひとつ。示唆される甘くノスタルジックな情景が音によって完全に別の意味を孕む、という点で非常階段 「MODERN」 「ROMANCE」 にも匹敵する傑作です。

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30. BABYMETAL 「BABYMETAL」

BABYMETAL(初回生産限定盤)

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従兄弟という存在って不思議な魅力があるような気がするんですよ。同じ親族なのに育った環境がまるで違ってて、自分と血が繋がっているけれど別の感性や価値観を持ってて、奇妙な距離感がある種ミステリアスで好奇心を掻き立てられるところがあるというか。そういう感じで俺は SU-METAL の従兄になりたいんです。たまに小遣いをねだられたいんです。

BABYMETAL - イジメ、ダメ、ゼッタイ - Ijime,Dame,Zettai (OFFICIAL) - YouTube




29. 堀江由衣 「秘密」

秘密

秘密

表題通り 「秘密」 がテーマということで、そこかしこに散りばめられた秘密というタームから広がるイメージは、もちろんミステリアスなものであり、破ってはいけない (故に破る) スリルと表裏一体に在るものであり、青春を甘酸っぱく彩る必須ファクターのひとつでもあるはず。これはその辺の 「秘密」 的な魅力を過不足なく網羅したウェルメイド・ポップソング集。

https://itunes.apple.com/jp/album/mi-mi/id499820810




28. チャットモンチー 「変身」

変身(初回生産限定盤)(DVD付)

変身(初回生産限定盤)(DVD付)

メンバー脱退を経たのち、あくまで 「ふたり」 に拘った試行錯誤の末に生まれたこの作品は、パッと聴きはいくつかの軽妙なアイディアが詰められた、ほんわかした感触のポップロック。けれども裏側には彼女らの並々ならぬ覚悟、苦心の跡が透けて見えるような、ある種の緊張感が漂っているような気がします。そして現在はすでにサポートを迎えて次ステージへ。

チャットモンチー 『満月に吠えろ』 - YouTube




27. pianaMuse

Muse

Muse

アンビエント/エレクトロニカの音響空間へ溶け込むようにして歌っていた彼女が、初めて明確に 「ポップス」 を意識した作品。その結果アートとポップの奇跡的なバランスが生まれました。柔らかな輪郭を持ったメロディはあまりにも瑞々しく透明で、それは時に冷たいナイフのような鋭さを持って胸に刺さってきます。

piana - In Silence (MUSIC VIDEO) from Muse - YouTube




26. 大森靖子 「魔法が使えないなら死にたい」

魔法が使えないなら死にたい

魔法が使えないなら死にたい

個人的に大森靖子に対しては愛憎半ばのようなアンビバレントな感情をずっと抱いているんですが、音源にしろライブにしろ普段の言動にしろ、何かと気にしては心を掻き回されがちであるということは結局のところ好きなんじゃないかと言われても反論できませんね。全身に爆弾を抱えたままで歌ってるような、居た堪れなさ一歩手前 (後) の凄まじい緊張感。

大森靖子「魔法が使えないなら」PV - YouTube




25. サカナクションDocumentaLy

いまやロキノン系の代表格となり、様々なフェスのヘッドライナーを務め上げるまでにブレイクしたサカナ。個人的に一番好きなのがこのアルバムなんですね。 「ルーキー」 「アイデンティティ」 といった代表曲を筆頭に、4つ打ちテクノサウンドへの拘りとポップで在ろうとする信念ががっぷり四つで組み合っており、ここにテン年代のスタンダードを示そうという意気込みが強く感じられます。

サカナクション - エンドレス(MUSIC VIDEO) -BEST ALBUM「魚図鑑」(3/28release)- - YouTube




24. bloodthirsty butchers 「youth (青春)」

youth(青春)

youth(青春)

吉村秀樹は死んだから伝説になったのではなく、生きながらにして伝説だったと思います。少なくとも自分が物心ついたゼロ年代初頭の時点ではすでに揺るぎない風格を漂わせており、何処か迂闊には手を出しにくい雰囲気もありました。もしあなたがブッチャーズに対して今更…と気が引けているのであれば、お節介ながら今からでもこのラスト作から聴き始めることをお勧めします。

bloodthirsty butchers / デストロイヤー Music Video (監督:川口潤) - YouTube




23. くるり坩堝の電圧

坩堝の電圧(るつぼのぼるつ)(通常盤)

坩堝の電圧(るつぼのぼるつ)(通常盤)

アルバム毎に方向性をグルグルと変え続けてきたくるりの、10作目にして初の集大成。ロックンロールであり、フォーキーであり、理知的であり、多幸的であり、密かに変態でもある。19曲という大ボリュームもあって並々ならぬエナジーを全体から感じます。キャリア的にベテランの域へと入った彼らが、こういった風格のある作品をしっかり出してくれるのは何とも嬉しい限り。

くるり - everybody feels the same - YouTube




22. XA-VAT 「艶℃」

艶℃(初回限定盤)(CD付)

艶℃(初回限定盤)(CD付)

今のところ残念ながらこの一発のみで終了してしまっているニューウェーブ・ロマンチシスト達の逆襲。例えば Dead or AliveDuran Duran 、もっと言えば TM NETWORK 的な80年代シンセポップの最もエッジィで軽薄な類。それをテン年代のフィルターに通して最もハイブロウな形で活性化させた、艶度100%の挑発的ポップアルバム。ああなんてロマンティックな。

XA-VAT/VAT-DANCE - YouTube




21. Lillies and Remains 「TRANSPERSONAL」

Transpersonal

Transpersonal

ゆらゆら帝国Carpenters と Suicide を同時に好んでいたように、彼らは BOØWY と Suicide を同時に好んでいるわけです。今作ではバンドサウンドのソリッド感に加え、シンセを効果的に用いてポップさを強化し、独自のキラーチューン・フォーマットを完全に確立しました。ダークでスタイリッシュ、ストイックなクールネスが背筋にゾクゾクくる。

Lillies and Remains - You're Blind - YouTube




20. ももいろクローバーZバトル アンド ロマンス

バトル アンド ロマンス

バトル アンド ロマンス

自分が初めて見た彼女たちのライブはまだ6人の頃の Ustream でしたが、汗ビッショリになりながらも決して笑顔を絶やさずアクロバティックなダンスを続ける、その気迫と根性はパソコンの画面越しからでも涙腺にクるものがありました。それから矢のように年月が経ち、このアルバムに収められた記録的瞬間風速は彼女たちにとって忘れられない青春となるでしょう。その瞬間に立ち会えた自分は幸福だったなと心から思いますあーりんワッショイ!!!!!

【ももクロMV】行くぜっ!怪盗少女 / ももいろクローバーZ(MOMOIRO CLOVER/IKUZE! KAITOU SYOUJO) - YouTube




19. sukekiyo 「IMMORTALIS」

IMMORTALIS(初回生産限定盤)

IMMORTALIS(初回生産限定盤)

よりディープな世界観へと到達するために始まった京 (DIR EN GREY) 率いる新バンド。透明感を重視したアトモスフェリックな音像となりつつも、リズム隊のヘヴィなボトムは保たれ、変幻自在な京のヴォーカルも悲痛さを湛え、聴き手を縛り付けるような濃密な空気を吐き出しています。他の追随を許さない表現者たちの内なる深淵。

sukekiyo 「aftermath」 (radio edit ver.) - YouTube




18. THE NOVEMBERS 「Rhapsody in beauty」

Rhapsody in beauty

Rhapsody in beauty

轟音を信条としたサウンドの緻密さはもちろん、他者へのリスペクトを公言しながら徹底した内省を踏まえる表現姿勢、自主レーベル設立によるパッケージング/マーケティングへの理念など、自らのスタンスに対する拘りを強く鍛え続けて孤高の存在へと踏み込みつつある彼ら。激しさも美しさも同じ器ですべて受け止めたこの作品がひとつの到達点ではないかと。

▲THE NOVEMBERS 「Romancé」- Normal Ver -▲ - YouTube




17. 清竜人 「MUSIC」

MUSIC(初回限定盤)(DVD付)

MUSIC(初回限定盤)(DVD付)

清竜人ナルシシズムが一切のタガを外して放たれた狂気の作品。ミュージカル風であったり電波ソングであったりといった方向性の変貌っぷりも強烈でしたが、それ以上にこの全編に漲った、愛したいし愛されたいと願いまくる自意識の強さに畏れを感じ取ってしまうのは自分だけでしょうか。道化のマスクを被ったその下の表情が読み取れない、居心地の悪さのような感覚がずっと付きまとう。問題作。

清 竜人 - ニューアルバム「MUSIC」予告編 - YouTube




16. 相対性理論シンクロニシティーン」

シンクロニシティーン

シンクロニシティーン

彼女らのカタログ中最もキャッチーでコマーシャルな作品。まるえつ嬢の脱力ウィスパーヴォイスや、 Johnny Marr ばりのカラフルに変幻するクリーントーンなど、すっかり洗練された音像に骨組みの強さも獲得。「相対性理論以降」 という潮流を生むのも納得な、確固たる個性が完成されました。自分が相対性理論に求めているものは全てこの作品に集約されてると言っても過言じゃない。

相対性理論『ミス・パラレルワールド』 - YouTube




15. world's end girlfriend 「SEVEN IDIOTS」

SEVEN IDIOTS

SEVEN IDIOTS

前作で weg としての集大成を成し遂げた彼が、ネクストレベルへと到達するために着手した J-POP 魔改造計画。これまでにもノイズ/コラージュによるユーモラスな遊び心は垣間見せていましたが、ここまで 「本気の遊び」 に徹したのは初めてかと。光と闇、美と醜、喜劇と悲劇がドロドロと混ざり合った異形のスペクタクル世界が展開されています。縦横無尽に駆け上がり、果ては煉獄向かって真っ逆さま。

world's end girlfriend - Les Enfants du Paradis (MUSIC VIDEO) from"SEVEN IDIOTS" - YouTube




14. 坂本慎太郎 「ナマで踊ろう」

ナマで踊ろう(初回盤)

ナマで踊ろう(初回盤)

「幻とのつきあい方」 を聴いた時はこのまま上手く棘を抜いてポップス職人的な方向に行くのかなと、ある種の納得と侘しさを感じていたところのコレだもの。さすがに彼を見くびっていたと己を恥じる次第です。様々な苦痛や不安を取り除き、やがて世界を支配する 「ソレ」 について淡々と、しかしそこはかとない艶めかしさをもって歌う。スティールギターの響きに憑りつかれ、あまりにも芳醇で毒々しい脳内ディストピア世界が開花した怪作です。

スーパーカルト誕生 (Birth of The Super Cult) / 坂本慎太郎 (Shintaro Sakamoto) zelone records official - YouTube




13. downy 「無題 (5th)」

downy 第五作品集『無題』

downy 第五作品集『無題』

テン年代に入っても未だ再結成ブームは続いておるわけですが、彼らもようやく重い腰を上げてくれました。長い年月を経てもなお、彼らが真の意味でオルタナティブな存在であるということをきっちり証明した傑作です。過去の経験を客観的に見つめ直しつつ、同時にこれから先の方向性も提示して見せた、何とも力強い一発。特に 「下弦の月」 など、これほど歌心とエモーションが表面化した downy は初めてでしょう。

downy - 曦ヲ見ヨ! - YouTube




12. 銀杏BOYZ 「光のなかに立っていてね」

光のなかに立っていてね *通常仕様

光のなかに立っていてね *通常仕様

肉体的にも精神的にも摩耗しきった彼らが瀕死の体で打ち放った怨念のような作品。リビドーもデストルドーもすっかり出し切ってしまい、それでもなおズタボロの雑巾をギリギリと振り絞ったかのような痛みと、何処か達観してしまったある種の清々しさすら感じられます。前作で自らが作ってしまった高い壁を無理矢理乗り越え、また新しい壁を築き上げてしまったという。あまりにも劇的すぎるバンド・ドキュメンタリー。

銀杏BOYZ - ぽあだむ (MV) - YouTube




11. kamomekamome 「Happy Rebirthday To You」

Happy Rebirthday To You

Happy Rebirthday To You

一筋縄ではイケない千葉は柏の豪傑たち。よりサウンドを硬く鋭く、反射神経を研ぎ澄ませ、声を最大にして感情を爆発させる。複雑怪奇にうねりまくる変拍子リフが、激情に背中を押されて大きな渦を生み出す。 Converge にも匹敵するブルータルな瞬発力ですが、べっとりした湿っぽさが纏わりつくのは日本人の血筋ゆえ。どちらにせよその祈りのような激しさを浴びれば、一気に頭の中をすっかり真っ白にさせられること必至。

kamomekamome「エクスキューズミー」 - YouTube




10. マキシマム ザ ホルモン予襲復讐

予襲復讐

予襲復讐

長きにわたって己の鬱屈とリビドーを熟成発酵させた結果、依然として白帯の中二バンドとしてギラギラと牙を剥く、痛烈な説得力を持った名作がひり出されました。楽曲はもちろんブックレットや販売形態に至るまで亮君言うところの 「みみっちい」 までのポリシーが詰め込まれた超特盛の重量盤です。ここまで自らの活動にスジを通せるバンドは他にはそうそう見当たらない。

マキシマム ザ ホルモン 『予襲復讐』 Music Video - YouTube




9. BUCK-TICK 「或いはアナーキー

テン年代になっても大御所はバリバリ健在です。 B-T を構成する諸要素が最新型にブラッシュアップされ、今井ちゃんのブッ飛んだ脳内ワールドもますますキレを見せております。エッジィでダンサブルなナンバーも良いですが、 B-T の陽と陰の両サイドをダイナミックに描いたラスト4曲の流れには何度聴いてもゾクゾクさせられる。ここに彼らの表現の神髄があるのではないかと思います。

[SPOT] BUCK-TICK「形而上 流星」2014.5.14 Release - YouTube




8. Galileo GalileiPORTAL

PORTAL(初回生産限定盤)(DVD付)

PORTAL(初回生産限定盤)(DVD付)

あまりにも鮮やかなサイケデリアと、遠い目をしたフォーキーな郷愁、そしてイノセントな魅力を持った何とも雄弁な歌。海外インディロックの最近の潮流を捉えながら、己の内から湧き出るメロディと繋ぎ合わせた、インテリジェントでいて優しい包容力に満ちたサウンド。最近はヴォーカル尾崎雄貴が菅野ようこやボカロPと組んだりといった活動もあり、その辺も枠に囚われない感があっていいですね。

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7. tofubeats 「lost decade」

lost decade

lost decade

決して帰ってくることのない10年のキラメキを詰め込んだ新世代エレクトロ青春群像劇。二十代の (当時) 学生がベッドルームで作り上げたからこそ、この刹那的な享楽の裏側に一抹の切なさ、侘しさが香るというリアリティが生まれているのかもしれません。こちらの先入観かもしれませんが。ただ俺は 「SO WHAT!?」 のような明るい曲、 「Fresh Salad」 とかのアッパーな曲を聴いてても何故だか切なくなってくるんですよね。三十路のオッサンには結構な毒だ。

tofubeats - 水星 feat.オノマトペ大臣(PV) - YouTube




6. DIR EN GREYARCHE

ARCHE(初回生産限定盤)

ARCHE(初回生産限定盤)

上の sukekiyo でもそうでしたが、彼らはフォロワーの追随を寄せつけない孤高の存在へと進化しました。プログレッシブ・デスメタルやポストメタルの要素を通過しながら、様々な試行錯誤を重ねた末に辿り着いた幽玄と激音。 「痛みを表現する」 のが彼らの信条ということですが、今作には痛みや悲しみといった負の感情ばかりでなく、それに耐えてなお前を向く強さ、あるいは包容力や優しさも含まれているような気がします。

DIR EN GREY - 輪郭 (RINKAKU) (Promotion Edit Ver.) - YouTube




5. andymori 「ファンファーレと熱狂」

ファンファーレと熱狂

ファンファーレと熱狂

自分は最後のツアーでようやく彼らのライブを見ることが出来ましたが、不器用だろうが破れかぶれだろうが今を心から楽しむために声をがならせる、その気迫は同時にある種の危うさも内包していて、確実に見る者への心へと訴えかけるものが感じられました。作品としては初期衝動に少しばかりの皮肉や諦観を混ぜ、纏まり良く仕上げたこの 2nd が至高ですが、ここから更に光を掴もうとして終焉へと直走るストーリーはあまりにもドラマチック。

andymori "CITY LIGHTS" - YouTube




4. ZAZEN BOYS 「すとーりーず」

すとーりーず

すとーりーず

変拍子だらけのキメに拘り続けた結果、現在ではもはや大道芸の域に差し掛かってる鬼アンサンブルの4人。今作ではザゼンの得意技のみが凝縮された、一部の隙も見当たらない作品になっています。鋭角に研ぎ澄まされた複雑骨折グルーヴと、不可解なユーモア、そしてひとつまみの哀愁。過去の集大成がシンプルとも言える形で結実したこの充実度は、ナンバガ時代から過去の作品をずっと追ってきた自分としてはなんとも感慨深いものがありますね。

https://itunes.apple.com/jp/album/sutorizu/id551310684




3. amber gris 「pomander」

pomander

pomander

テン年代の新鋭ヴィジュアル系として個人的に最も期待しているのがアンバーグリス。ラウドでもオサレでもキラキラでもなく、牧歌的な暖かみの中に時折翳りを感じさせる楽曲は、さながら西洋童話のような世界観。ヴォーカル手鞠の伸びやかで繊細な歌声だったり、鮮やかで品のあるツインギターの絡みなど、聴き所満載の秀曲揃い。ここから Moran や yazzmad なんかと一緒に新たな潮流が生まれてくれることをぼんやりと願っていたり。

amber gris 「pomander」 SPOT - YouTube




2. あさき 「天庭」

天庭(初回生産限定盤)(DVD付)

天庭(初回生産限定盤)(DVD付)

V-ROCK が何処までも進化できることを圧倒的な質量で提示した名作。変拍子をガンガン盛り込みながらも一切スピード感を殺さない演奏力、曲構成の巧みさ。昨今のメタル/ラウドロック勢とシンクロしつつ、まるで先の読めない展開は他とは確実に一線を画した濃厚さ。おどろおどろしい和風ホラーな世界観もV系マナーに則りながらオリジナルの境地を見せるものであり、長い歳月を費やして自らの個性をとことん煮詰めて吐き出した、オリジナリティ溢れすぎな一発です。

[PV]天庭 - あさき (TENTEI - ASAKI) - YouTube




1. 神聖かまってちゃん 「友だちを殺してまで。」

友だちを殺してまで。

友だちを殺してまで。

この記事では代表作ということで便宜的にこのデビュー作を取り上げていますが、彼らは今に至るまでエキセントリックな側面に頼りすぎることなく、常に過去を更新する傑作をリリースし続けています。自らの血と涙を切り売りするような、それでいてあくまでもメロディの美しさに拘った楽曲を作り続け、の子はバンド結成からそれこそ今現在に至るまで、自分という爪痕をどれだけ世の中に残せるか、必死に足掻き続けている印象を受けます。どの楽曲も聴いていると自分の内なる扉を無理矢理こじ開けられてるような気分になる。それはテン年代において最も大きなインパクトでした。

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