Pop. 1280「Paradise」

Paradise

Paradise

ニューヨーク出身の4人組による、2年半ぶり3作目。


前作「Imps of Perversion」では The Birthday Party に肉薄する野蛮なジャンク・ロックンロールを展開していた彼らですが、今作ではシンセサウンドの比重が大幅に増加しており、以前とはかなり違った感触を覚えます。上擦ったヴォーカルの声質も相まって全体の雰囲気からは「Metal Box」期の Public Image Ltd. を連想するのですが、そこにインダストリアル由来の冷徹な攻撃性を注入してビルドアップし、自らの内に潜むダークネスをより一層ソリッドに、かつ狂気的に発露したサイバーパンク・ハードコアとなっています。冒頭「Pyramids on Mars」から聴き手を闇の淵へと引きずり込もうとするサバトのような瘴気を発散し、「In Silico」では刺々しいバンドサウンドと良い意味で大味なシンセの濁流が激しくカオティックな渦を巻く。アルバム表題は完全に反語と化し、延々と続く悪夢のようなディストピア的音世界が徹底してこちらの不安を煽り続ける。彼らにとってこのインダストリアル要素の導入は決して付け焼き刃ではなく、更なる深みに到達するための必然的な変化。それを十分に証明する力強い内容です。

Rating: 7.9/10



Pop. 1280 "Pyramids on Mars" (Official Audio)