Jeremy Cunningham 「The Weather Up There」

Weather Up There

Weather Up There

米国シンシナティ出身のドラマー/コンポーザーによる、3年8ヶ月ぶり2作目。


この作品は2008年に強盗に襲われて亡くなってしまった彼の弟に捧げられているとのこと。そのコンセプトは要所要所で挟まれるモノローグ(いずれも彼の親類や友人らによるもの)によっても支えられていますが、それ以上に楽曲自体の持つ魅力が、彼の内に立ち昇る故人への思いを的確に描き切っていると思います。時にはさざ波のような静けさを湛え、時には熱を帯びてロールする緩急自在のドラムプレイが主軸。そこに手練れのゲスト陣が加わって陰影に富んだジャズセッションを展開するわけですが、おそらくプロデューサー兼ギタリストの Jeff Parker (Tortoise) が大きな貢献を果たしているのでしょう、彼が先日上梓した新譜と同様に、今作もジャズを基調としながらジャンルの枠に囚われない様々な音楽要素が組み込まれています。咽び泣くようにしてアグレッシブなギターが鳴らされる「1985」や表題曲「The Weather Up There」などは特に挑戦的で、ジャズとブルースとアンビエントの境目を緩やかに行き来する音像はそれこそ Tortoise 、あるいは Mogwai などポストロックの領域にまで肉薄するもの。沈痛なばかりではない、郷愁と慈愛が色濃く投影された傑作です。

Rating: 8.3/10



Jeremy Cunningham - The Weather Up There