PELICAN FANCLUB「Home Electronics」

Home Electronics

Home Electronics

2012年結成の4人組による初フルレンス。


前作にあたる「OK BALLADE」を聴いた時にも思ったことですが、彼らには陽の面と陰の面が存在します。陽は今作の冒頭「深呼吸」から連打される直線的ギターロック。快活なスピードと力強い開放感、真っすぐで澄んだ声質が歌詞をくっきりと伝えるヴォーカル。その中にはサイケな感触など海外インディロックからの影響を思わせる音作りも見られるという、ちょうど Galileo Galilei と繋がる部分の多いスタイル。そして陰は「Black Beauty」「許されない冗談」で急にスイッチが入ったように見せるノイジーな攻撃性。そこで見せる気迫はそれまでの爽やかさを瞬時に真っ黒へと塗り替えるインパクトで、こちらは初期 THE NOVEMBERS を連想させるもの。ただ今作は全体的には前者の陽サイドに大きく比重が傾いており、そのぶん陰サイドの存在が浮きがちなものに感じられる。確かにメロディだけでも十分魅力のあるバンドではあるし、以前よりも歌モノに対する意識が高まったが故の変化だと思うのですが、アートとポップのバランス感覚としてはセルアウト一歩前で踏み止まった、なかなか際どい所だなと感じました。ある種過渡期的な印象が残る。

Rating: 7.3/10



PELICAN FANCLUB - Night Diver(MV)

北出菜奈「VIOLET BLAZE」

VIOLET BLAZE

VIOLET BLAZE

ソロとしては約8年ぶりとなる4作目。


昨年に彼女の所属していた THE TEENAGE KISSERS が活動停止し、次なる手として打ってきたのはシンセポップ。かつてのロック/オルタナティブ志向、挑発的でスパイキーなスタイルからは距離を置き、昨今のメインストリームへの目配せとも言えるスタイリッシュな音像へと変貌。品のある落ち着きと確かなダンスグルーヴを携えた、新たな方向性を全面的に提示しています。これは以前のバンドはもちろんのこと、それより前のソロ時代と比較しても明らかに別種のもの。しかしながらこれまでのキャリアをすっかり黒歴史として葬ってしまってるわけではなく、澄んだ声質の中に見せる仄かにセクシーで艶やかな感触だったり、そこはかとなくミステリアスな雰囲気を醸し出す彼女のヴォーカルは、一度ゴシックの世界観へと身を寄せたからこそ生まれ得るものではないかと。これが二度目のデビュー作だと言わんばかりに全編とても瑞々しさに満ちており、「Canary」や「Shine Drops」などは特に暖かな陽の光を感じさせますが、そこにも耽美的な意識は密かに通底してる。アルバム表題が表すような静けさと美しさ、そして火傷しそうな熱さも内に秘められた11曲。

Rating: 7.7/10



北出菜奈 NANA KITADE - Make-Believe