MINAKEKKE「TINGLES」

TINGLES

TINGLES

ユイミナコによるソロユニットの初フルレンス。


そもそもはアコースティックギター弾き語りのスタイルから出発したとのことですが、このデビュー作ではそのフォーク要素を飲み込むようにして、ゴシック/ダークウェーブ、シューゲイザー、あるいはポストロックの素養を感じさせる空間的ギター/シンセサウンドが目一杯に充満しています。深い眠りの中でこの世ならざる世界を夢見るような浮遊感があり、その心地良さの裏側にはふとした瞬間に全てが崩れ落ちてしまう、そんな不穏で繊細な感覚が常に棚引く。美しさと同時にある種の危うさを孕んだ、ディープな世界観を構築しています。日本でゴシックとなるとメタリックな攻撃性、あるいはバキバキのエレクトロに向かうパターンが多い中で、実験的アプローチを盛り込みつつもあくまでフォークに立ち位置を置いた彼女のような音楽性は意外と珍しいものかも。ただ海外のこの手のアクト、例えば Chelsea Wolfe や Marissa Nadler などと比較するといささか惹き込む磁力に欠ける気がする。おそらくは何処となく川瀬智子を彷彿とさせる、気怠げでピッチの甘いヴォーカルが原因だと思うのですけどね。ゴシックならではの迫力という点ではやや爪が甘い感。

Rating: 6.3/10



MINAKEKKE "KIDS" (Official Music Video)

Mew「Visuals」

ヴィジュアルズ

ヴィジュアルズ

2年ぶりとなる7作目。


今作を聴き終えた後に最初に思ったのが「Coldplay みたいだな」という。前作「+-」で力強くオープンに開けたスタジアムロックへと向かった彼ら。ここではその路線をなお推し進め、骨太なオルタナティブロックからスペーシーなシンセサウンドへとすっかり移行。ますますドリーミーで煌びやかな Mew 流ポップチューンが出揃っています。リズムにはまだバンドらしい生の感触が残されていたり、従来のプログレッシブな構築性も細かな面では見られるものの、全体から受ける印象は最近の Coldplay だったり、あるいは Foster the People や Phoenix など、要するに昨今のメインストリームを牛耳っているダンスポップ、その潮流を真っ向から受け止めたメジャーバンドとかなり近似したもの。まあ彼らも本国デンマークではすでに国民的な人気を確立していることだし、そういったポップ路線へと舵を取るのは予想できることではある。ただ人によってはセルアウトとも捉えられかねない今回の内容は、以前のエッジィな作風に愛着のある身としてはやはり寂しさを感じてしまう。ちょうど良い硬軟のバランスを保っていた前作と比べると、ポップに偏りすぎな感。

Rating: 6.5/10



Mew - 85 Videos (Official Video)