筋肉少女帯 「月光蟲」 「断罪!断罪!また断罪!!」 「エリーゼのために」 「UFOと恋人」

昨日に続いて筋少祭りの2回目です。トイズファクトリー時代の後半。

月光蟲

5作目。沼田元氣氏による強烈なジャケットが目印。

「猫テ」 から新体制での方向性を突き詰めてきて、ここで最初のピークを迎えたんじゃないかと思います。楽曲のクオリティの向上に加えてアンサンブルはさらに一体感を増し、オーケンの歌詞は猟奇的かつ文学的な深みを増してる。バンドとして脂の乗った勢いを感じさせます。スラッシーなスピード感と7拍子の変則リズムで斬り込む 「風車男ルリヲ」 、ロックンロール寄りのラフさ/軽快さが印象的な 「少年、グリグリメガネを拾う」 、力強いストリングスを導入したポップサイドの傑作 「サボテンとバントライン」 、滑るようなベースラインとクリーントーンが冴え渡るデュエット曲 「夜歩くプラネタリウム人間」 、やたら陽気でファンキーなノリが逆に毒々しさを浮き彫りにしてるような 「僕の宗教へようこそ」 、代表曲の一つでもある高速ポルカメタル 「イワンのばか」 と、とにかく個性的な名曲が満載、なおかつ全体の流れや10曲40分で程良くまとめ上げるセンスも素晴らしい。個人的には筋少最高傑作。

Rating: 9.6/10

断罪!断罪!また断罪!!

6作目。ジャケットはオロ仮面っていうんですかね。画像ないけど。

何といっても 「踊るダメ人間」 。相変わらずの迫力ある演奏と単純明快なサビメロに乗せてモラトリアム少年少女の本質 （痛い所） を言い当てる歌詞が秀逸すぎる。 「この世はダメ人間ばかりだから全て燃やせ」 → 「でも結局一番ダメなのは自分」 → 「やっぱり生きていかざるを得ない」 という流れが頼んでもない程に説得力抜群。10年以上経った現在でもその有効性は全く損なわれてない、というかむしろニート/引きこもりが社会問題として蔓延る現在の方がリアルさを持って響くという。良いんだか悪いんだか。後にリメイクされて復活の布石にもなった代表曲です。その他も問題提起するディープな歌詞が印象的な橘高メタルチューン 「パブロフの犬」 、無常感漂うシンセや合唱団コーラスも交えて筋少の中でも最も深遠な広がりと聴き応えある重さを表現した 「何処へでも行ける切手」 （エヴァの綾波レイのモデルになったというアレ） と相変わらず粒立ちの良い楽曲群。 「月光蟲」 の直後だけにボリューム不足な感は否めないけど、逆に言えば少数精鋭の秀曲が揃ってます。

Rating: 7.8/10

エリーゼのために

ベスト盤 「筋少の大車輪」 を挟んだ後の7作目。

ここで少し方向転換しましたね。本城氏の楽曲が本格的に増え始め、今回は11曲中6曲という多作ぶり。勇壮なメロディが印象的な 「人生は大車輪」 、マーチ風のコミカルな小ネタ 「じーさんはいい塩梅」 、90年代前半の J-POP としてチャート常連曲と張り合えそうな 「生きてあげようかな」 と、単純に 「良い」 と言えるメロディ主体の曲が増え、バンドに新しい風を吹き込んでいます。また今回佐久間正英氏をプロデューサーに立てたからか、ヴォーカルが前に出たミックスが施されて、そのぶんさらにメロディが強調されてますね。スッキリと洗練されてまた別の魅力が浮き出てきた。ただやはり、その洗練の代償としてバンドサウンドの厚みはかなり後退して迫力が削がれてしまい、その辺で食い足りなさが残るのも事実。特に 「妄想の男」 以降の後半部分は弱いと感じてしまう。聴きやすさと本来の毒が拮抗する異形ポップス。

Rating: 7.4/10

UFOと恋人

8作目。トイズファクトリー時代のラスト作です。

今回のテーマはズバリ 「売れ線ポップスに対するアンチテーゼ」 。曲名通りとしか言いようのない 「おサル音頭」 に始まり、バンドブームをネタに人生の無常さを歌った 「高円寺心中」 、全身の力が抜けるサーフロック 「俺の罪」 、さらには 「コアなファン捨てても欲しいタイアップ」 と身も蓋もない俳句読んじゃった 「タイアップ」 がある一方でタイアップ丸出しの 「バトル野郎〜100万人の兄貴〜」 なんて曲もあったり、最後 「バラード禅問答」 は次のアルバムの宣伝で締めたりと、とにかくアホなB級感満載、全方位型の皮肉満載な内容。当時はバンドブームが完全に過ぎ去ってしまったり、オーケンは本当に病気になるほどUFOに傾倒したりで、色々あったのかなあとしみじみ考えてしまう。音的には今回も佐久間氏プロデュースでポップ路線を踏襲しつつ、シンセ/プログラミングの割合が増してチープなニューウェーブ風打ち込み音が随所で飛び交い、これもB級感に拍車をかけてる気が。筋少中最もコミカルな、今までとは別のタイプの毒が盛り込まれたアルバム。

Rating: 7.2/10

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