OGRE YOU ASSHOLE「ハンドルを放す前に」

ハンドルを放す前に

ハンドルを放す前に

約2年ぶりとなる7作目。


「homely」以降、オウガとゆらゆら帝国坂本慎太郎との共通項は散々指摘されていることかと思いますが、この新作については特にその影を強く感じます。坂本氏が今年の新作「できれば愛を」で見せていたアプローチ、それは以前にも増して甘美なメロディや心地良いグルーヴ感から逸脱し、ますます空虚でシュールな感触が強められたもの。それとほとんど同様に、このオウガの新作もより実験的な側面を強めています。AORプログレクラウトロックエレクトロニカの要素をすっかり吸収し、もはや生音とシンセ音の区別もままならないアンサンブル。ギターやサックスなどの上モノが仄かにスウィートな雰囲気を醸し出していたとしても、スカスカの密度と脱臼したような歪なリズム、そのシュールさが決して聴き手に安心、安堵をさせてなるものかとばかりに迫る。ただどれだけ味気を削いでも音の表面にねちっこい気持ち悪さが浮いてくる坂本氏と違い、彼らのサウンドは極めてドライで無機質的。これだけ叙情の入り込む余地のない音世界に、取っ掛かりを見つけるのは自分にとってなかなか至難の業なのですね。あまり類のない景色ではあるのですが。

Rating: 6.4/10



OGRE YOU ASSHOLE - なくした