Deerhunter 「Why Hasn't Everything Already Disappeared?」
Why Hasn't Everything Already Disappeared? [解説・歌詞対訳付 / ボーナストラック3曲収録 / 国内盤] (4AD0089CDJP)
- アーティスト: Deerhunter,ディアハンター
- 出版社/メーカー: BEAT RECORDS / 4AD
- 発売日: 2019/01/18
- メディア: CD
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また強烈な代物を出してきたなという感じ。音的には前作「Fading Frontier」でシンセサイザーを多く導入してドリーミーな浮遊感を強調していたのが、今作ではハープシコードやホーンなどの華やかな音色を活かしたバロックポップの様相へと変化し、なおかつ彼ら特有の蕩けるようなサイケ感も健在で、彼らの中ではトップクラスに外向きのポップネスを携えた内容かと思います。ただこれまで彼らが単純にポップで心地良いだけの作品を作ったことなどは一度もなく、どれだけ幻想的な美しさに満ちた曲調であっても、歌詞からは神経症的な不安や恐怖、死の匂いが強烈に漂っていました。その個々の「死」が、ここでは「世界の荒廃」という SF 的世界観にまでスケールを拡張しています。グラムロック的な快活さを見せながら労働力として死ぬまで消費され続ける人類を描いた「Death in Midsummer」、無気味にピッチシフトされた人工知能のような声がピースフルな演説を展開するというシュールさの「Détournement」、そして Bradford Cox の悲痛な訴えが無情にも掻き消えていく「Nocturne」。例えば坂本慎太郎「ナマで踊ろう」にも通じる毒気がここには充満しています。
Rating: 7.9/10