D.A.R.K.「Science Agrees」

SCIENCE AGREES

SCIENCE AGREES

2009年結成の3人組によるデビュー作。


Dolores O'Riordan(The Cranberries)と Andy Rourke(The Smiths)のタッグ、ということで色めき立つ90年代思い出迷子族は少なからずいるのでは。実際に今回の楽曲を聴いても、シェイクリズムにラフなギターカッティング、テンポ良く階段を踏み上がっていくようにリフトアップしていくブリッジ~コーラスの流れ。今日日ここまでストレートなポップロックって逆に少ないんじゃないか?というほどの王道っぷり。ただ前述のバンドを単純になぞらえただけではなく、楽曲によってはシンセポップの要素も大胆に混ぜ込み、浮遊感あるヴォーカルがトラックの上で伸び伸びと羽を広げる、さながら New Order のような雰囲気もあり。ただどちらにしても往年の UK ロックの王道を踏襲していることには変わりなく、テン年代の急進的なインディ・オルタナティブ勢に耳を慣らされた若い衆にとっては、衒いがなさすぎて味気なく感じられるかもしれません。しかしそれでも、「Gunfight」や「Miles Away」といったダンスチューンには刹那的な熱狂とアンニュイな倦怠の混合、幽玄な空気感を纏ったヴォーカルの個性によって面白いものになってるのではないかなと。

Rating: 6.4/10



D.A.R.K. – Curvy (Official Audio)

Clipping「Splendor & Misery」

SPLENDOR & MISERY

SPLENDOR & MISERY

ロサンゼルス出身の3人組による、2年3ヶ月ぶり2作目。


話によると今作は「宇宙空間を放浪するたったひとりの生存者と、恋に落ちた宇宙船のコンピューターボード」が主人公となるコンセプトアルバムらしいです。みんな大好き SF だ!でも中身はスターウォーズスタートレックのような壮大さ、ドラマチックな華やかさとは随分と距離を置いたエクスペリメンタルな代物。ドスの効いた重低音が鳴り響くノイズ/インダストリアルから、不意を突いて表れるソウル/ゴスペルのハーモニー、そしてリズムのグルーヴをほとんど必要とせずに繰り出されるフリーキーなラップ。それらが絡み合って緊張感と同時に何処か空虚で無常な、それこそ宇宙空間を思わせる浮遊感が生み出されています。短尺のインタールードを多く挟んだ仕掛けだらけの展開で、コークスクリューのごとく曲が進行していく。もしかするとこれをヒップホップとして正当に評価することは難しいかもしれません。しかし何が飛び出すか分からないコラージュ的な構成は非常に刺激的だし、早口で切れ味鋭く言葉を捲し立てるフロウにはヒップホップ本来の魅力が確かに生きている。チクチクと知覚の扉を開いてくれそうな15曲37分の音楽体験。

Rating: 8.1/10



Clipping. - Baby Don't Sleep [OFFICIAL VIDEO]