Goldfrapp「Silver Eye」

Silver Eye [帯解説・ボーナストラック1曲収録 / 歌詞対訳 / 国内盤] (TRCP-210)

Silver Eye [帯解説・ボーナストラック1曲収録 / 歌詞対訳 / 国内盤] (TRCP-210)

ロンドン出身の2人組による、3年半ぶり7作目。


ほぼほぼ全部盛り。Goldfrapp はアルバムによってその音楽性を大胆にシフトしており、ゴシックなフォークトロニカから煌びやかなエレクトロポップ、暖かみのあるドリームポップといった風に軽やかな変遷を遂げてきました。今回はそれらの多様な音楽性がひとつの盤の中に見え隠れする、総括的な内容になっています。序盤「Anymore」「Systemagic」はファットなグルーヴを意識したダンスポップ、「Faux Suede Drifter」「Zodiac Black」は荘厳な雰囲気を湛えたアンビエント、「Everything is Never Enough」「Moon in Your Mouth」では M83 などのエレクトロ・シューゲイザーの領域まで肉薄するなど、陽が落ちてまた昇るように楽曲の色味はスムーズなグラデーションを見せる。普通なら方向性がとっ散らかってゴテゴテしたアルバムになりそうなものですが、浮遊感に満ちた上モノに対するキッチュなビートというプロダクションの統一感、また穏やかなようで表情豊かな Alison のヴォーカルによって、ヴァラエティに富んだ楽曲群がひとつの線で綺麗に結ばれています。Goldfrapp とは結局どういう音楽なのか、自身の再定義をきっちり果たした10曲。

Rating: 7.5/10



Goldfrapp - Anymore (Official Video)

Mastodon「Emperor of Sand」

Emperor of Sand

Emperor of Sand

米国アトランタ出身の4人組による、2年9ヶ月ぶり7作目。


一時のプログレへの傾倒から、近作では再び初期のオルタナティブ・メタルへの回帰を見せていた彼ら。それが今作ではさらに進行し、硬く太くタイトに研ぎ澄まされたヘヴィネスを携え、全パートが一丸となって猪突猛進の勢いを見せるヘヴィ・ロックンロールの応酬となっています。ヴォーカルの高らかなシンガロングパートが増えたり、ギターサウンドも以前とよく比較すると丸みを帯びて洗練されたものだったりと、経験を積んだが故の円熟味は良くも悪くもある。ただそれでも、きめ細かな手数を詰め込んだ目まぐるしさがありつつ、突進力を重視してキャッチーな攻撃性がほぼ絶え間なく続く、そのアレンジの複雑さと印象としてのシンプルさを両立した楽曲群は、特濃でありながら無駄がなく、焦点が綺麗に定まった印象を受けます。さらには「Roots Remain」や「Jaguar God」といった長尺曲では世界観のディープさを提示するシアトリカルな装飾、プログレ要素の名残りも見られ、それが全体の中で面白いアクセントとして機能してる。マストドンの魅力のコアを成す部分が再凝縮されたような内容にウンウン唸らされっぱなしでした。

Rating: 8.2/10



Mastodon - Show Yourself [Official Music Video]