Protomartyr 「Relatives in Descent」

Relatives in Descent

Relatives in Descent

デトロイト出身の4人組による、2年ぶり4作目。


元々変なバンドではあったけど、いよいよ極まって変なバンドと化しつつあります。Joy Division を筆頭とするゴシック派ポストパンクの系譜を受け継ぎながら、Fugazi など US ポストハードコアの鋭く硬質な音の鳴りも携え、緊迫感とシュールさが入り混じった複雑なダークネスを発散していた彼ら。今作ではパンク由来の直接的な荒々しさが一層強化され、荒涼とした音の中にメロウな渋味を見せる場面も多々あるなど、ハードコアサイドの魅力により重点を当てているように見える。ただその一方で奇怪なゴス要素は薄れるどころかますます異物感を増しており、彼らはその異物感を逆手に取っています。快活なアップテンポで飛ばしたかと思えば神経症的な不穏さが頭をもたげたり、センチメンタルなフレーズを奏でたかと思えば気色の悪い不協和音が挿入されたりで、暖かいのか冷たいのか微笑んでるのか怒ってるのか、一聴しただけではどうにも曲の表情が見えない。様々な質感の狭間にあるグレーゾーンを意図的に狙ったようなニュアンスは、一種のシニカルな毒となって聴き手の感覚を徐々に麻痺させていく。こんなに我が道ばかり進み続けてこの先どうなるのか。

Rating: 7.9/10



Protomartyr - A Private Understanding (Official Video)

Wolf Alice 「Visions of a Life」

Visions of a Life

Visions of a Life

ロンドン出身の4人組による、2年2ヶ月ぶり2作目。


シューゲイザー/ドリームポップを一番の核としながら、時には60年代サイケデリアやオルタナティブグランジの攻撃的なディストーションへとシフトするなど、様々なジャンルを取り入れた楽曲の多彩さは前作「My Love is Cool」においても特徴的でしたが、この新作ではその枠がさらに押し広げられています。茹だる夏の青空に溶けていくような直球シューゲイザー「Heavenward」、衝動的にヘイトを撒き散らすパンクチューン「Yuk Foo」、そして跳ねたリズムがやけにキュートに映る「Beautifully Unconventional」から果てしない開放感に満ちた「Don't Delete the Kisses」。トラックが変わるたびに方向性が軽やかにスイッチされていくこれら序盤の流れは特に鮮烈なもの。全体的には音の輪郭が滲んだシューゲイザー由来のプロダクションを施しており、その点では一貫した共通項があるにはある。しかしヴォーカル Ellie Rowsell の表情の豊かさも相まって多面性の方がやはり際立ち、派手さが先行していささか纏め損なっているようにも見えます。ただ広い視野を持ったチャレンジングな内容なのは確かだし、この野心の表れは自分としては買いたいところではある。

Rating: 6.9/10



Wolf Alice - Heavenward