筋肉少女帯 「Future!」

2年ぶりとなる18作目。


アルバム表題はもちろん歌詞のあちこちにもタームが頻出するように、今回のテーマは「未来」。「オーケントレイン」「ディオネア・フューチャー」では過去を振り切って未来に進めと聴き手を力強く鼓舞し、「サイコキラーズ・ラブ」では猟奇犯にも、「3歳の花嫁」では死期の迫った父親にも未来は在ると歌う。ともかく幸せを手にするためには未来に向かって走り抜けという、実に熱い訓示をオーケン独自のコミカルな筆致で描いた一大コンセプトアルバム…と言うと随分真っ当な内容のように見えますが、音的には復活後の中では最も変なアルバム。多分ウッチーが完全に 70's プログレな「エニグマ」やら完全にナゴムな「告白」やらといった、本当に変な曲ばかり書いてるのが一番の原因な気が。その一方でおいちゃんやふーみんの書く曲も各々の得意分野に完全に特化しており、それらが前/中/後に局在してるので彼らの方向性のバラバラっぷりが一層際立つ。テーマが真面目になるほどヘンテコな作品になってしまうという彼らの業たるや。でも筋少ってこういうバンドなんですよね。ある意味彼らの持ち味が濃い形で表れた、頼もしさ溢れる一発。

Rating: 7.9/10



筋肉少女帯「エニグマ」MV  (2017年10月25日発売AL『Future!』収録)

King Gnu 「Tokyo Rendez-Vous」

Tokyo Rendez-Vous 紙パッケージ版

Tokyo Rendez-Vous 紙パッケージ版

東京出身の4人組によるデビュー作。


バンドの中心人物である常田大希は東京藝術大学出身とのことで、まあ芸大出身ミュージシャンにもピンからキリまでいるとは思いますが、彼らのようにあからさまなまでにアカデミズムを感じさせる例はかえって少数派なのではという気がします。ファンクやヒップホップ由来の人力グルーヴを下敷きに、時にはジャジーな洗練に向かい、時にはフリーキーなシンセ音を突っ込んでアヴァンポップとしての要素をアピール。個人的にはその音像から BeckGorillaz 、国内だと APOGEE なんかを思い出したのですが、それらと決定的に違う点は良くも悪くもなヴォーカルの個性の濃さ。ファルセットによる流麗さから粗雑な巻き舌まで、サウンドと同様に表情をクルクルと切り替えて見せる様は演劇的とも言えるもので、したたかな傾奇者であろうとするそのスタイルは昨今のインディバンド勢の中では明らかに浮いたもの。その奇矯さはややトゥーマッチに感じる部分もあるのですが、ある意味若手らしい初期衝動的な野心がはっきり表れているし、毒にも薬にもならないよりはこれくらいカマしてやった方が丁度良いだろうと。このさき大器となりそうな予感がひしひし。

Rating: 7.3/10



King Gnu - McDonald Romance