APOGEE 「Higher Deeper」

Higher Deeper

Higher Deeper

約3年半ぶりとなる5作目。


前作「OUT OF BLUE」においてもそうでしたが、現在の彼らは例えば「ゴースト・ソング」や「アヒル」などで見せていた、ポップなメロディにいかに挑戦的なアレンジを組み込むかという路線ではなく、純粋にポップソングとしての良質さを突き詰めているような向きがあります。ほとんどシンセに比重が傾いた透明感の強いサウンド、そこにファンクやダブステップ/トラップ通過後の洒脱なグルーヴ、また「In Between」なんかは APOGEE 流フューチャーベースといったところでしょうか。ともかくそういった現行のクラブサウンドへの接近を試みつつ、溶けるように柔らかなヴォーカルと密接に融合させた楽曲は、デビュー時のような強烈なインパクトこそないものの、コンテンポラリーな意識を高く持って創作に臨むという点では別の意味でチャレンジング。また英語詞の割合も増加してますます海外インディポップ勢へのシンパシーを強める中で、中盤の「Into You」や「KESHIKI」における日本語詞はやたらと新鮮に感じます。英語詞とは明らかに違う伸びやかな音の響きを活かした、メロディに対する別角度からのアプローチ。ここは永野亮が元来から持つ強みですね。

Rating: 7.3/10



APOGEE - Sleepless (Official Music Video)

Preoccupations 「New Material」

New Material

New Material

カナダ出身の4人組による、1年半ぶり3作目。


デビュー時から70~80年代の所謂ポストパンクを志向している彼ら。ただ一口にポストパンクと言っても色々あるわけで、個人的には彼らの音楽を聴いていて真っ先に思い出すのは Bauhaus だったりします。もちろん彼らはゴシックホラーな世界観を表立ってアピールしているわけではありません。それでも効果的にシンセを用いつつほとんど贅肉の無いアンサンブル、そこに施されたアブストラクトな音響処理は仄暗くおどろおどろしい印象を真っ先に与えるものだし、音の中に埋もれがちなメロディは意外なほど親しみやすいもので、それを時に扇情的に、時に溶けるような穏やかさをもって歌う Matt Flegel のヴォーカルは何処となく Peter Murphy を彷彿とさせなくもない。また彼らは作品を重ねるごとに徐々に角が取れて柔らかな音像にシフトしており、この新作でもそれは同様。特に「Decompose」や「Disarray」など、しなやかな歌声とサウンドが密接に溶け合って生まれる浮遊感が、緊迫したダークな雰囲気の中に心地良い風を吹き込んでいるようで、その複雑なニュアンスは何とも味わい深い。ストイックな姿勢を保ちつつ、ますます円熟へと向かった納得の内容です。

Rating: 7.8/10



Preoccupations - Disarray (Official Video)