Wye Oak 「The Louder I Call, The Faster It Runs」

THE LOUDER I CALL	 THE FASTER IT RUNS

THE LOUDER I CALL THE FASTER IT RUNS

米国バルチモア出身の男女デュオによる、1年10ヶ月ぶり6作目。


かつてはインディロック/フォーク、あるいはスロウコアに近似したアナログな音楽性を基調としていた彼女ら。しかし作品を重ねるごとにシンセサウンドを取り入れるなど柔軟な変化を続け、この新作ではこれまでの内省的、牧歌的といったイメージを大胆に打ち破っています。ついに全編に渡ってエレクトロニクスがメインに導入され、浮遊感に満ちたシンセや生音の質感をキープしたビート、その他様々なテクスチャーが柔らかく自然に折り重なり、さながら新世代のフォーク・ドリームポップとでも言うべき開放的なスケール感のある作風へとシフト。その中で何よりも目を見張るのは Jenn Wasner のヴォーカルでしょう。かつての Elizabeth Fraser (Cocteau Twins) をすぐに呼び起こさせる、大きな翼をはためかせるような伸びやかで美しい歌声。これまでにも彼女の歌がバンドの中心にあったのは確かですが、今回の幻想的な曲調に合わせて完全にリミッターが外れたかのように、実に揚々とした情感豊かな歌を披露しており、彼女が本来持ち合わせていた力量がここでようやく全貌を表したと言っても過言ではないはず。自由な野心を強く感じさせる快作です。

Rating: 8.3/10



Wye Oak - The Louder I Call, The Faster It Runs (Official Music Video)

Yamantaka // Sonic Titan 「DIRT」

Dirt

Dirt

カナダはモントリオール出身の6人組による、約4年半ぶり3作目。


メンバー全員が歌舞伎役者のごとく白塗りメイクを施し、ニューウェーブでもノーウェーブでもない Noh(能)Wave を自称するなど元々クセの強いバンドではありましたが、今作ではそのクセが(一部の層に向けて)より極端に強調されたような内容です。サイケ、プログレ、メタル、ポストロックといった大仰な類の音楽性を混ぜこぜにし、シャーマニックな女性ヴォーカルがその大仰さに輪をかけるという従来の音楽性を踏襲しつつ、その中でも今作は特にプログレとメタルの要素が割増しとなり、土臭くいなたいディストーション、複雑に入り組んだ変拍子グルーヴのうねり、さらには Emerson, Lake & Palmer などを彷彿とさせるキーボードプレイも随所に挿入し、まるで70年代への憧憬がそのまま現代のインディロックシーンに生き写しとなったような、ますますカルトな領域へと歩を進めています。挙句の果てにはアグレッシブな楽曲のタイトルが何故か「Yandere」だったり、アルバムジャケットもクールジャパンの影響がモロだったりで、もしかしたらこのプログレ志向も EL&P とかじゃなく植松伸夫あたりの影響かもしれませんね。ある意味微笑ましい一枚。

Rating: 8.0/10



YAMANTAKA // SONIC TITAN - Yandere (ヤンデレ)