STRUGGLE FOR PRIDE 「WE STRUGGLE FOR ALL OUR PRIDE.」

WE STRUGGLE FOR ALL OUR PRIDE.

WE STRUGGLE FOR ALL OUR PRIDE.

1993年結成の4人組による、12年ぶり2作目。


ヴォーカルとドラムが奥底に引っ込み、ノイズギターばかりが強調された異形のハードコアという音楽性もさることながら、前作においてはカヒミ・カリイや MSC といった全く別の畑からのゲスト参加も話題を呼んでいた彼ら。この新作においてはそういったクロスオーヴァーの手法がさらに推し進められ、カヒミに続いて小西康陽中納良恵 (EGO-WRAPPIN') を招聘、またヒップホップ界隈からのトラックメイカーによるインストゥルメンタル、そしてクローザーには今年急逝した FEBB の楽曲まで詰め込まれ、もはやジャンル横断どころかアルバムとしての纏まりをすっかり放棄した、ミックステープあるいはプレイリストといった趣。この極端な落差が続く実験的な内容は、彼らの立ち位置から見た現在の東京のアンダーグラウンドをリアルに切り取った結果なのかもしれません。ただそれらの楽曲を連ねてもバンド本隊に新たな魅力が宿るわけでもなく、ハードコアバンドとしての彼らの主張はどうにも見えてこない。クラブカルチャーとハードコアの融合という手段が目的にすり替わってしまったような、音の暴力性とは裏腹にひどく頭でっかちな印象ばかりが残りました。

Rating: 3.8/10

Klan Aileen 「Milk」

Milk

Milk

2007年結成の2人組による、約1年半ぶり3作目。


前作でいくつか見られた、初期衝動的なアップテンポのロックンロール曲は排除。そのぶん今作ではバンドの目指す焦点が絞られ、ますますストイックに鋭い眼光を差してくる、ある意味非常にハードコアな内容となっています。殺伐とした雰囲気の中に妙に艶めかしい情緒を差し込んでくる作風は downy を彷彿とさせたり、人力によるミニマルな反復が10分超にまで及ぶ「元旦」などはまるで Neu!「Hallogallo」と This Heat「24 Track Loop」の混血のようにも見えたり。ただそれらの楽曲すべてに共通するのは、とことんまで練り込まれたサウンドプロダクションの凄味。場面場面でシンセも使用しているのか、それとも純粋にギターのみで作られたのか、ともかくノイズやエアーも含めた空間的なテクスチャーが慎重かつ大胆に重ね合わされ、ドラムとギターの最小編成とは思えないほどの音の膨れ上がり様。時には茫洋とした霧の向こうから手招く亡霊の呼び声のように、時には一切合切を飲み込む津波のように、金属質のささくれ立ったアンサンブルが聴き手を徐々に飲み込んでいく。ポストロック、ポストパンクの遺伝子を根っこの部分から継承した、何とも辛辣な音です。

Rating: 8.4/10



Klan Aileen - "脱獄/Datsugoku" (Official Music Video)