GEZAN 「Silence Will Speak」

SILENCE WILL SPEAK

SILENCE WILL SPEAK

2007年結成の4人組による、2年ぶり4作目。


得体の知れない何かに突き動かされているかのように、作品を重ねるたびに彼らは変化を続けています。前作「NEVER END ROLL」で見せていた感傷的なパンクロックから大きく変異し、ここではメタル/ハードロックの重厚なダイナミズムを獲得。特にオープナー「忘炎」では濁流のようなギターノイズと高速ビートがブラックメタルの影響を感じさせ、その中で内なる闇を片っ端から燃やし尽くす勢いで絶叫が木霊する。ただ Steve Albini によるアナログ音響のため完全なメタルとはいかず、むしろパンク/ハードコアの出自を活かした生々しくいなたい音作りが、彼らの個性を奇妙に捻れたもののままとしています。それと同時にヒップホップの要素も台頭し、OMSB や Campanella が客演した畸形のミクスチャーロック「BODY ODD」、寂寥と殺伐が入り混じった空気感から ZAZEN BOYS54-71 の匂いも何処となく感じられる「懐かしい未来」のような新境地もあり。何より今作で最も印象的なのは、前述の「忘炎」においてマヒトゥ・ザ・ピーポーが「エンドロールの終わり 今はロスタイム」と明確に宣告している通りの、いつ果てるかも分からない焦燥感。

Rating: 7.9/10



GEZAN - NO GOD (Official Music Video)

Tempalay 「なんて素晴らしき世界」

なんて素晴らしき世界

なんて素晴らしき世界

約1年ぶりのリリースとなるミニアルバム。


どういうわけか最近 BTSツイッターでフックアップされて俄かに注目を集めている彼ら。今作からシンセサイザー奏者の AAAMYYY が正規加入ということで、例えば「テレパシー」では打ち込みを大幅に導入し、トラップビートの解体/再構築を施したような不可思議グルーヴが強烈な印象。その他の楽曲においても、彩りを増しながら一層フリーキーに発展したサウンドデザインに、新体制としての野心が目一杯表れています。ただ彼らは元より懐古的なサイケデリックロックにエレクトロニカやヒップホップなどの先鋭的な要素を混ぜ込むという、言葉本来の意味でのミクスチャースタイルを展開していたバンドなので、この度のメンバーチェンジによる変化は横幅の拡張と言うよりも、従来の方向性をさらに濃密に煮詰めていくための真っ当な深化という感じですね。不穏なローファイ感から徐々に美しさが滲み出すリード曲「どうしよう」の構成の妙技、ブルース/ハードロックの土臭いダイナミズムまでも自然に馴染ませた「SONIC WAVE」、今作中最たるポップさと不可解さが入り混じった「カンガルーも考えている」など、短い中にもやはり食えない魅力が満載。

Rating: 8.0/10



Tempalay "どうしよう" (Official Music Video)