tofubeats 「RUN」

RUN

RUN

神戸出身のトラックメイカーによる、約1年半ぶり5作目。


オープナーに据えられた表題曲「RUN」を聴くと、焦燥感や空虚感のようなものが未だに彼の中で燻っているのかなという印象を受けます。ただポジティブに前を向いて走るというわけではない、心の隙間をどうにか埋めるために今はただ走ることしか出来ないという、漠然とした不安がこびり付いたままでの疾走。またその他の楽曲、流麗なグライム調の「NEWTOWN」や、ほとんどピアノ弾き語り的なアレンジの「DEAD WAX」など特にアルバム後半において、前作「FANTASY CLUB」で全編をうっすらと覆っていたブルーな感情が今作でも受け継がれており、客演を排した全曲 tofubeats 本人による歌唱というスタイルが、そのエモーショナルな側面をさらに引き立たせています。ただその間に挟まれている、彼のポップス職業作家としての外向きの顔が表れた「ふめつのこころ」や「MOONLIGHT」、またインストゥルメンタルのダンストラック連発といったパートなどは内省的な空気感が薄れ、全体の流れをどうも散漫なものにしているような気がする。確かにどの楽曲にも tofubeats らしい個性は宿っているのですが、統一感のあった前作に比べると色々詰め込み過ぎな感が。

Rating: 6.5/10



tofubeats「RIVER」

High on Fire 「Electric Messiah」

エレクトリック・メサイア

エレクトリック・メサイア

カリフォルニア出身の3人組による、3年4ヶ月ぶり8作目。


今年まさかの復活作を上梓した Sleep は今現在においても衰えることなく、むしろその存在感を昔より更に強烈なものとしていました。これは Matt Pike が単なる懐古主義者ではなく、絶えず第一線でこの High on Fire としての活動を継続していたからこそ、Sleep にもそのフレッシュな現役感が付いてきたのではないかなと思います。すでに散々指摘済みのことでしょうが、彼の中に DNA として Black SabbathMotörhead の二大巨頭が組み込まれており、Sleep では前者、High on Fire では後者の方が強めの配分で表れています。ただ表層的なトリビュートには終わらず、より重く、より野蛮に在ろうとする探求心を常に燃やし続ける姿は、本質的な意味で先人達の意志を引き継いだ、それこそアルバム表題通りのロックンロールの救世主と言えるのではないでしょうか。実際今作も地雷を踏み付けながら爆走するような痛快極まりないヘヴィチューンのオンパレードであり、過去最長の尺となった「Sanctioned Annihilation」など質量ともに限界をまたひとつ更新しています。また一際メロディックな仕上がりの終曲「Drowning Dog」は彼ら流の NWOBHM と言って良いのか?激シブ。

Rating: 8.0/10



High On Fire - Electric Messiah