あっこゴリラ 「GRRRLISM」

GRRRLISM(初回生産限定盤)(DVD付)(特典なし)

GRRRLISM(初回生産限定盤)(DVD付)(特典なし)

東京出身のラッパーによる、約3年ぶりフルレンス2作目。


アルバムタイトルはゴリラに引っ掛けたところもあるでしょうが、本筋はもちろん Riot Grrrl でしょう。ファッションも生き方も自分自身で選ぶ自由宣言の表題曲「GRRRLISM」を筆頭とし、「グランマ」では年齢がどうのこうの、「エビバディBO」ではムダ毛がどうのこうの、昔ながらの社会が定型とした「女性らしさ」の概念に徹底的に反発した内容。かつての HAPPY BIRTHDAY 時代には世間一般が求める Kawaii 女子力と現実の自分とのギャップで苦悩していたのが、今となってはそんな世間一般なぞ知ったことかと言わんばかりの吹っ切れ方で、凝り固まった常識や価値観を飛び越えてダイバーシティを尊重する、と言う意味では CHAI なんかとも共通するアティテュード。そういったあっこゴリラ自身のキャラクターや思想が際立ってアピールされているのは良いのですが、端正なエレクトロビートで統一されたトラックには正直さほど目新しさを感じず、バラエティに富んでいた以前の作品と比べると、全体的に流れがのっぺりした印象を受けました。歌詞表現の先鋭性に対してヒップホップとしての先鋭性が追いついてない、と言うか。

Rating: 6.9/10



あっこゴリラ 『GRRRLISM』

5lack 「KESHIKI」

KESHIKI

KESHIKI

東京都板橋区出身のラッパーによる、3年9ヶ月ぶり6作目。


実兄 PUNPEE が本格的にスターダムへと進出しつつある傍ら、5lack はそれをまるで意に介することのないように独自の道を進み続けています。ジャジーな暗がり、あるいはアンビエントの静けさを湛え、時には敢えてのノイズを塗してヴィンテージ感を帯びたトラック群。そこには遠くの夕陽を眺めるような侘しさやノスタルジーがゆらゆらと棚引き、その中でささやかな喜びや内省的な悲しみを交えながら、必要以上に自分を大きく見せたり、また必要以上に塞ぎ込んだりすることなく、あくまでも客観的な目線で今ここにいる自分を過不足なくさらりと切り取って見せる、そのさり気なくも流暢なスキルは今作でも健在です。オフェンス態勢の「SITT」「Turn」などもありますが、ここで特に印象的なのは「CUS」などで見せる、ほとんど歌と言って良い滑らかなフロウ。一定のテンションの中で見せる自由なメロディ感覚が随所で効かされ、今作中最も彼の心境が生々しく表れているように見える「Last day」や、ギターの音色が渋い「進針」に至ってはもはやブルースの境地。周りの景色が変わっても自分は変わらない、そのブレないスタンスが明確に表れています。

Rating: 7.4/10



Twiligh Dive/5lack