Cocco 「スターシャンク」

約3年ぶりとなる10作目。


聴いていて最初に感じたのは意外にも「安心感」でした。それは単純に中心のメロディのせいだと思います。彼女のメロディセンスの根本はデビューの頃からほぼ変わっておらず、ヴァース・コーラス・ブリッジを丁寧に重ねていく曲構成も含めて、90年代 J-POP の最も熟した部分がそのまま現在に持ち越されているようでもあり、新譜であるにも拘らず不意に懐かしさを覚える。しかしながらそのメロディを飾り立てるアレンジは非常にヴァラエティ豊かで、これまでのキャリアの中で1、2を争うほどの多彩な内容となっています。特にアルバム後半の流れが強烈。仄暗く神秘的なエレクトロポップ「Ho-Ho-Ho」、そこから一気にキラキラアッパーに突き抜けるダンスチューン「願い叶えば」、淫靡なゴス性を(何故か)バリバリに発揮した曲名そのままの「極悪マーチ」、中島みゆきNirvana …ではなく Korn との邂逅となった「Come To Me」と、光から闇、端から端までの移行がダイナミックすぎてもはや笑いすら込み上げてくる。アルバム表題の「スター」がそれらの雑多なアイディアだとすれば、軸を意味する「シャンク」はちょうど先述のメロディ、ということかなと。

Rating: 7.7/10



Cocco 「願い叶えば」 Music Video

GLAY 「NO DEMOCRACY」

NO DEMOCRACY[CD+2DVD盤](メーカー特典なし)

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2年3ヶ月ぶりとなる15作目。


TAKURO は今作について「言葉のアルバムを作ろうと思った」と述べていますが、その発言がこれまで以上に固い意志の宿ったものであることは、先行シングル「元号」の時点で十分明らかにされていると思います。時代が平成から令和へ変わるのを機に、昭和の戦争がもたらしたものに思いを馳せ、平成の荒波の中で徐々に変化してきた自身を内省し、新しい時代を生き抜くための在るべき姿勢を綴った、ひとつの決意表明と言える新重要曲。その意識はもちろんアルバムにも引き継がれています。晴れ晴れしい曲調が完全に反語と化した「反省ノ色ナシ」、暗い世相が生々しく反映された「戦禍の子」などは直球でポリティカルだし、その他の楽曲でも「歴史」「時代」「アメリカ」といった単語が表れるたび、一個人の恋愛事情やクダ巻きですらも現代の混沌たる政治情勢と無関係では済まないのだと、思わず仄暗い気持ちに陥りそうになる。ただ彼らがやるのは決してプロパガンダではなく、苦しくとも前を向こうと聴き手の背中をそっと押すのみ。この辺のバランス感覚も含め、彼らの「国民的ロックバンド」としての責任感の強さには本当に敬服する。

Rating: 7.6/10



「氷の翼」Lyric Movie