Plastic Tree 「Hide and Seek」 「Puppet Show」 「Parade」 「Cut 〜Early Songs Best Selection〜」


今年はデビュー10周年を記念して武道館ワンマンをやるそうですね。長いようであっという間の10年。何だか感慨深くなってしまったので、改めて過去の作品について書いてみたいと思います。その前半。



Hide and Seek

Hide and Seek

まず1作目。キャッチコピーが 「プラスティックな禁断症状」 という。


今よりもずっと線が細いんですが、そのぶん耽美かつ陰鬱なムードが前に出てきてます。1曲目 「痛い青」 は包み込むような広がりと刺々しさを併せ持ったギター、低く這いずるようなベースと抜けの良いドラム、そして竜太朗氏の浮遊感あるヴォーカルが彼らならではの歪んだ世界観を演出。ちょうど彼らが影響を受けたと公言してる The Cure 「Pornography」 を彷彿とさせる内省的なダークネスが素敵です。またアップテンポで攻撃性が増した 「割れた窓」 「クローゼットチャイルド」 、滑るような透明感が美しい 「まひるの月」 も良い。そしてディープな闇の底にズブズブ沈んでいくような感覚が堪らない 「水葬。」 からアグレッシブに壊れる 「ねじまきノイローゼ」 、さらに 「Hide and Seek #2」 でカオティックに微睡んでいく、この辺の流れがこのアルバムの1番のハイライトかと。サウンドの質は違いますが、この頃からすでに独自の美意識を持ってたんだなと唸らされる1枚です。


Rating: 7.6/10



Puppet Show

Puppet Show

2作目。このアルバムから本格的に注目され始めましたね。


前作から音の厚みやグルーヴ感が格段に増し、真っ当にロックバンドらしいダイナミズムを獲得して、フィジカルな即効性が強くなりました。 ギターはオルタナ/グランジに通じる荒々しさを見せ、ヴォーカルは中性的な浮遊感に加えてヒステリックな絶叫も飛び出すようになり、それらが時には叙景的に、時には痛々しく心情を吐露する歌詞と相まって、深く心に突き刺さってきます。「May Day」 や 「リセット」、また前ヴァージョンよりもグッと迫力の増した 「本当の嘘」 「クリーム」 は単純にロック曲として凄く格好良いし、オーケストラを従えて壮大な広がりを見せる 「幻燈機械」 、静と動の極端な対比で感情のメーターが振り切れた 「『ぬけがら』」 「3月5日。」 、ディープな奥行きと切ないメロディが響き渡る大曲 「サーカス」 と、表現の幅が一気に増して、スロウな長尺曲でも緊張感が緩まずに持続しつつ、全体の流れも凄く良い。あまりに思い入れが強いんでアレですけど、やっぱり今聴いても色褪せてない名盤です。歪んだポップ感のある歌詞カードもとても素敵。


Rating: 10.0/10



Parade

Parade

シングルリリースを続けて、2年ぶりとなった3作目。


今までの内向きで病的なムードが幾分か抜けて、洗練されてきたなという印象。シングル曲が多いというのもありますが、真っ当な歌モノといった構成の曲が多く、演奏陣の音も垢抜けてて聴きやすくなってます。複雑にギターの音色が絡み合って、まさに光の群れが浮かんでいくような 「エーテル」 で始まり、「ロケット」 「スライド.」 「ベランダ.」 と、彼ら流のポップチューンの連打。もちろんヘヴィなグルーヴを描く 「少女狂想」 や、切なさがエモーショナルに響き渡る 「空白の日」 、アグレッシブな疾走チューン 「十字路」 と毒っぽさを感じさせる曲もありますが、やはり洗練された音のせいか、ポップサイドの印象の方が強いですね。当時は前作までの湿っぽい空気感が大好きだったので、良いなあと思いつつ少し割り切れない所もあったりして。 音質が違うだけで印象も随分変わるものなんだなあ…という (特に 「トレモロ」 が顕著) 。セルアウトという見方もできなくもないですが、これはこれで良いのかなと。


Rating: 6.8/10



Cut?Early Songs Best Selection?

Cut?Early Songs Best Selection?

過去の曲をリアレンジして再録したベスト盤。


申し訳ないですけど、これは失敗作だと思います。大胆にデジロックと化した 「サイコガーデン」 や、音質や演奏力の面で順当にグレードアップした 「twice」 は良いんですが、それ以外は単に録り直しただけといった曲もあったりで面白味に欠けるのに加えて、録り直すことで元のヴァージョンの持ってた空気感がほとんど吹き飛んでしまってて、物理的には勢いや迫力が増してるのにイマイチ響いてこない。昔に比べるとやはり色んな面で洗練されてしまってるので、その辺でどうしても違和感が強く残ってしまうんですね。特にギターがかき消えてしまってる 「割れた窓」 や妙に演奏にこなれた感のある 「絶望の丘」 「May Day」 とかは随分ガックリきた。まだそんなに月日も経ってないのに、何故このタイミングで録り直す必要があったのかがよく分からないし。残念な作品でした。


Rating: 5.0/10


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