ムック 「アンティーク」 「痛絶」 「哀愁」


明日はロックの日じゃありません。ムックの日です。しかも今年は記念すべき結成10周年だし、ベスト盤も出たし (買ってないけど) 。つーことでムックの過去作についてザーッと振り返る企画、その1です。密室ノイローゼ時代の3枚。




初のCD作品となるミニアルバム。画像は初回盤ですけど、俺が持ってるのは 2nd プレス。これとシングル 「娼婦/廃」 で彼らを知りました。


今よりも若干線が細く耽美な要素が強いですけども、昭和歌謡風のレトロなメロディラインに荒々しくヘヴィな演奏、その中で痛みや苦しみ、悲しみといった負の感情を吐き出すという彼らのスタイルはこの頃から既に健在です。また篭り気味の音質が全体の雰囲気を湿っぽいものにしてるようで、それが世界観のダークさに輪をかけてると思います。アグレッシブかつ複雑な展開で情念が燃え盛る 「焼け跡」 、耽美色の強い 「4月のレンゲ草」 、クリーントーン→ヘヴィネスの展開が少し Nirvana を思わせつつ、重々しく攻撃的な要素が一層冴え渡った 「オルゴォル」 、一転して女性視点の歌詞で描かれる深い切なさが彼らのポップサイドと共に花開く 「九日」 、ワルツ調でさらに深く堕ちていく代表曲 「アカ」 と、わずか5曲ながら重さ、情念深さは十分詰まっていて、何とも濃い内容。デビュー作にしてムックという強い個性を十分にアピールする傑作だと思います。様々な書体が紙面で踊るブックレットも素敵。


Rating: 9.2/10



痛絶(3rd press)

痛絶(3rd press)

初のフルアルバム。初回盤は2001年1月にリリース。


核となる部分は 「アンティーク」 から変わらずに、でも確実に変化が感じられます。音はより荒々しくなって肉体性が増し、そのため攻撃的な要素が強調されており、また曲数が増したぶん楽曲のヴァリエーションが増えたといった具合に、ある種順当なグレードアップを遂げてる。 「イタイ手紙」 「娼婦」 「廃」 辺りが顕著ですが、メロディや曲展開などにおいて多彩なアイディアが効いていて、ダークな密度がさらに濃くなってます。その一方で軽快なシャッフルと明るいトーンのサビが面白い 「鎮痛剤」 、アコギと歌のみでフォーキーな側面を打ち出した 「砂の城」 が新鮮なアクセントになってる。またグルーヴィーな演奏が格好良い 「盲目であるが故の疎外感」 は今後のムックの主軸となる曲調ですね。そして大ラス 「断絶」 は実体験を元にしたというイマジナティブな歌詞と、緩やかに鳴らされるアコギの音色が突き刺さるような鋭さを持って響き、徐々に荒々しさを増して深く心を抉ってくる名曲。実にカタルシスに溢れていて泣けます。 「娼婦」 「廃」 はシングルに比べてミックス面で不満が残るのが残念ですが、それを差し引いても十分お釣りのくる、充実した内容であります。


Rating: 8.8/10



哀愁

哀愁

「アンティーク」 以前のデモテープから数曲を選んでリテイクした、いわばアーリーベスト盤。


超初期の楽曲ということでまだハッキリとは方向性が定まっておらず、至る所に所謂ヴィジュアル系の枠組みが見え隠れしてますね。しゃくり上げの強いヴォーカルやラウドなギターを聴けばムックだと分かるんですが、ストレートなビートロック調の 「翼を下さい」 や、 「ジレンマ」 もテンポがころころ変わる構成は面白いけどメロディ自体はモロヴィジュだし、やたら耽美ロマンチックな歌詞がありがちの域に陥ってしまってる 「狂想曲」 にしても、正直彼ららしさは薄いです。その一方で四畳半フォークまっしぐらの 「あやとり」 が混在してたりして、何というか、迷走してるなーという感じが (苦笑) 。もちろん演奏はいつもの彼らなんですけど、それもなんだかまとまりに欠けるというか、荒々しさが悪い方向に出てしまってる気がする。プレミア価格のデモテープに手が出せないコアなファンには需要があるでしょうけど、完全にそういう人たち向けの作品ですねコレは。


Rating: 5.8/10


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