MUCC 「惡」

惡 [初回生産限定盤]

1年4ヶ月ぶりとなる15作目。

自分がムックというバンドを知ってから、あれやこれやでもう20年。その20年という長い年月の中で培われた安定感、またこれまでの経験を数多くフィードバックしたが故の重量感が全編に表れています。アルバム序盤では昭和歌謡風のこってりしたメロディと引き締まったヘヴィサウンドの取り合わせ、すなわちムックにとっての一番のコアとなる要素をストレートに打ち出した楽曲が並び、過去の作品で言えば「朽木の塔」辺りの雰囲気も何処となく感じられたりで、相変わらずな味の確かさに思わず頬が緩んでしまう。その後には煌びやかなシンセを噛ませた「目眩」や、ストリングスを重ねて切なさを壮大に拡張する「アルファ」など比較的最近の路線も兼備していますが、メロディの質感や楽器隊の強固さがどの曲でも共通しているため、今までの彼らに何かとありがちだった横道に逸れまくりの雑多さではなく、一本のフルセットライブのようなダイナミックかつ纏まりのある流れを成立させています。時期毎に違ったベクトルの音楽性を取り入れながら、そのいずれも黒歴史として葬り去ることをせず、全てのキャリアをひとつの確かな線で結んでみせた力作ですね。

Rating: 7.5/10

MUCC／『惡』全曲Trailer