FUJI ROCK FESTIVAL '09 3日目


何か凄くあっという間な気がしますが、とにもかくにもフジ最終日です。


昨日よりさらに1時間程度早く宿を発ち、シャトルバスにも難なく乗れて到着。この日も概ね晴れでした。朝一番で行くとオアシスもガラガラで気持ち良いねー。餅豚丼食いながらゲートで配布してたゴミ袋敷いてグリーンの芝生に寝っ転がり、サウンドチェックの音を聴きながらぼやーっと過ごすという俺にとっての理想の過ごし方。基本的に惰眠貪るとか大好きなグータラ人間なのでね。もうこのまま緑の中に溶けて消えてしまいたい (えー) 。でも見るものはちゃんと見ないと。つーか俺朝に気合い入れすぎてトリの方になると集中力切れてくるというパターンばっかりな気がするな…。


MASS OF THE FERMENTING DREGS @ RED MARQUEE
見るのは去年の4月以来なんですけど、その時よりも随分と逞しくなったなーという印象。 「I F A SURFER」 「かくいうもの」 「ハイライト」 などラウドで迫力のある音を響かせながら、澄んだ声の通るメロディが演奏の中へ自然に馴染む。その荒々しさや力強さといった面が、経験を重ねて着実に強化されてきたのだなということが分かる、ライブアクトとしての成長が実感できる内容でした。特にベースの宮本嬢がね、獅子舞のごとく髪を振り乱しながら演奏し、曲が終わった後にニカーっと笑うのがこっちも痛快でしょうがない。2年前に ROOKIE A GO-GO に出演し、ゲート内で演奏するのが夢だったとか MC で話しつつ不意に声を詰まらせてて、思わずこっちも頑張れーって思ったりとか、いつの間にそんな思い入れが強くなってるんでしょうね。朝イチから前の方で楽しくキャッキャできました。非常に良かったです。


POLYSICS @ WHITE STAGE
ふと思ったのだけど、メンバーの配置変わったのっていつから?カヨ様がステージ右手からセンター寄りの後方に下がって、ハヤシがセンターから右手に移ってる。でもこの方がメンバー全員を見渡しやすくてしっくりきますね。意外にも彼らフジロックは10年ぶり、しかもその10年前も3日目のホワイト1発目だったという。そして音楽性も相変わらずのニューウェーブパンクポップだけど、このバンドは変わらなくても十分格好良いので全然アリです。こちらも 「New Wave Jacket」 「ピーチパイ・オン・ザ・ビーチ」 「Baby BIAS」 とライブ定番曲連発。荒々しくも安定感のある演奏はやはり鉄板で盛り上がりますな。新曲の 「Shout Aloud」 もパンキッシュな高速ビートで疾走するライブ向けチューンでモッシュは一層苛烈なことに。40分でキッチリ全力出し切る内容で満足でした。やはり前の方でキャッキャしてたらいつの間にかタイムテーブル無くした。


JUANA MOLINA @ ORANGE COURT
ブエノスアイレス音響派の歌姫ということですが、そんなジャンルあったのか。フアナ本人はヴォーカル/シンセ/ギター、そしてサポートにベースとドラムのトリオ編成。フアナがその場で弾いた/歌ったフレーズを即時サンプリング→ループさせ、それをガンガン重ねていって一つの曲を構築していくという玄人テクを連発。ダンサブルな4つ打ちで迫る時もあるけど基本的にはゆったりどっぷり浸る系で、真昼の晴れた野外にはまるで似つかわしくない、ミステリアスでファンタジック、時にはダークですらある独自の世界を展開していました。しかしこれもミスマッチの妙というか、ロケーションと合わせて奇妙な味を醸し出していて面白い。これ木道亭で聴いたらもっと良かったかもしれんね。不可思議なスキャットが森の奥地まで手招く誘い声のようで、そのうち帰って来れなくなりそうな気もする。


DE DE MOUSE @ WHITE STAGE
ここからホワイトに常駐します。デデ本人が中心でマニピュレート担当、その後ろに女性ピアニストと、左右にツインドラムを従えた4人編成。正直音源聴いた時もエキゾチックなファンタジー感とか、切なさの打ち出し方があざとすぎてあんまり好きになれなかったんですが、ライブ見てもそのイメージはあまり変わらなかったです。生ドラムが入ることでビートの強度が増してフィジカル面はそれなりに響くのですが、やっぱこの何処かしらスノッブ臭いムードがどうもなー。あと暴言吐くようで申し訳ないですが、なんかこの遠藤大介という人見てるだけで妙にムカつくんですよね (本当に暴言だな) 。なんか身体小さくなってテクノに目覚めたオードリー春日のような感じで、やたら挑発的に煽ってくるのがいちいち癇に障る。また急にすっげー雨降るしさらにテンション降下。でもピアニストの人が素朴な感じで爽やかに笑ってて可愛かったので許します。


CLAP YOUR HANDS SAY YEAH @ WHITE STAGE
ファーストはお気に入りで一時期良く聴いてて、でもそれ以降はそこまでハマらずにズルズルと未聴の時間が流れ、ちゃんと対峙して聴くのって結構ご無沙汰だな。ヘロヘロのヴォーカルをはじめ基本的にみんなローファイ志向で、シューゲイザー的な暖かみのある包容ノイズを鳴らしつつ牧歌的なメロディを滲ませるインディポップ。うむー決して悪くはないし、 「Upon This Tidal Wave Of Young Blood」 などが始まると自然と身体が反応するのですけども、正直ホワイトの広さに似合うスケール感、あるいはカリスマ性などがあるとは言い難い。まだバンドの基礎体力が十分についてないというか、ローファイならローファイなりにもう少し見せ方を工夫してほしい気も。やたら淡々としてて見どころ/聴きどころを掴めず、正直退屈な印象の方が強かったです。


高橋幸宏 / YUKIHIRO TAKAHASHI @ WHITE STAGE
ところ天国でメシ食ってたらちょっと遅刻した。巨大なスクリーンをバックに大所帯バンドで登場。本人はどこぞの執事のようなノーブル衣装でキメて、ドラムとマニピュレートを行ったり来たり。途中ではゲストで小山田圭吾も参加してました。ファンク的な躍動感を見せる曲があれば、研ぎ澄まされたエレクトロニカの透明感を前面に出した曲もあり、しかしそのいずれでも高潔で純度の高いポップ感は一貫してるという。穏やかに肩の力の抜けたヴォーカルも音全体に馴染み、透明感を助長してて良い。個人的には後半のポップさを重視した楽曲がとても良かった。まるで映画のワンシーンのようなイマジナティブな映像が流れ、愛と平和を仰々しさや押しつけがましさ抜きに、リリカルな輝きをもって響かせるという。俺は正直 YMO 周辺の作品にはまるで疎いですけども、それでも実に彼らしい音だなと思いました。最先端の技術とセンスを駆使し、それが嫌味臭くなくジェントルな魅力として伝わってきた。良かったです。


ANIMAL COLLECTIVE @ WHITE STAGE
彼らも個人的に今年の目玉ですね。この日は Avey Tare 、 Panda Bear 、 Geologist の三人編成。それぞれがシンセサイザーを駆使し、時には一心にドラムを連打したりギターを弄ったり、特にセンターの Avey Tare が忙しなく楽器を取り換えて様々な役割を担ってる。ヴォーカルも彼がメインだし。それで内容なんですが、やはり音源の曲をまともに演るなんてことはしなかった。全ての音が極限までエコー/リバーブ処理されて凄まじくドープな音の渦を生み出し、何処から何処までが1曲なのか分からないほど様々な音が同化。分かったのは 「Also Frightened」 「My Girls」 「Fireworks」 「Brother Sport」 辺りか。サイケデリアを極限まで追求した、まるで先の読めないサウンドの深みに完全に飲まれてしまいました。今までに見たことない類のパフォーマンスで判断し難いけど、インパクトという点では申し分無かったので多分良かったんだと思います。そもそもアニコレにまともなポップさとかグルーヴを求めるのが間違ってるのだろうね。まるで秘境の奥地の謝肉祭みたいなイメージを喚起させる、正しくフリークスだからこそ出せる音。圧巻でした。


RÖYKSOPP @ WHITE STAGE
ちゃんと曲聴くのはこれが初めてです。ノルウェー出身の2人組テクノユニット。大トリということでホワイトはほぼ満杯に。マニピュレートを務めるメンバー以外にはベーシストと女性シンガー。スウィートさと北欧らしい低熱の幽玄さを併せ持ったメロディは心地良いし、ビートもそれなりに踊れるものではあるんだけど、うむーちょっと個人的には肩透かしだったな。エレクトロダンスポップとして良質なのは分かりますが、やっぱり大トリだしそれまでにも色んな意味で濃ゆいアクトは散々出てきたので、普遍的な良さ以上に何かしらインパクトのあるものをどうしても求めてしまう。特に目新しい仕掛けがあるわけではなく、真っ当に曲の演奏を進めていくのがちょっと物足りなかったです。剽軽な日本語 MC はちょっと面白かったけど。


ASAKUSA JINTA @ CRYSTAL PALACE TENT
帰り道に何気なく CRYSTAL PALACE へ寄り道してみる。そういや俺このゲート外ステージには入ったことなかったな。するとそこで演奏してたのは浅草ジンタ。これがまた格好良かった。ホーンセクションも加えた6人編成で、昭和歌謡にパンク、スカ、ロカビリーなどのテイストを混ぜ込んだごった煮スタイル。一緒に振り付けして煽ったりするエンターテインメント性の高いパフォーマンスといい、パッと連想したのは赤犬でしたが、赤犬よりも歌心を大切にしてる感じで、粋な下町風情の歌謡メロが俺のツボをグイグイ刺激する。誰でも惹き込んでしまう人懐っこいムードと、身体にしっかり響くパワフルさも感じられたライブで良かったです。ウッドベースとヴォーカルを兼任する兄ちゃんはこれぞ伊達男って感じで素直に格好良いと思ったし、個人的には赤犬よりもこっちの方が好きかもしれない。これも音源聴いてみたいなー。最後に予想外の見っけもんできて後味もよろしゅうございました。


以上でフジロックは終了です。各日のベストアクトは M83 、 筋肉少女帯Animal Collective ってことで。やはりフジはその日のテンションを天候に思いっきり左右されるので、キツいときは結構本気でキツかったりするんだけど、やっぱり何だかんだ言っても実際に行ってしまえば楽しめますね。回数を重ねるごとにコツを掴んでスムーズに立ち回れるようになれます。あと出演バンドの半分くらいは知らない名前だったりしますが、それでもフジは当たりを弾く確率が高い気がする。ワールドミュージック系などあまり世間の流行り廃りと関係がないセレクトも多いし、どっかしら探せば良いものには出会える。多分来年も行くと思います。心残りは Franz FerdinandBasement Jaxx 、あと Gang Gang Dance が見れなかったことだなー。