The Field 「Cupid's Head」

CUPID'S HEAD

CUPID'S HEAD

スウェーデン出身、 Axel Willner によるユニットの2年ぶり4作目。


ミニマルテクノ/トランスとエレクトロ・シューゲイザーを掛け合わせた傑作 「From Here We Go Sublime」 から、作品を重ねるごとにダウンテンポへの嗜好が表れていましたが、ここに来てその方向転換がひとつの結実を見せた感があります。長い尺の中で少しずつ輪郭の曖昧なレイヤーを足し引きしていく手法は変わっていませんが、深い霧のように空間を支配するシンセサウンドは全体にノスタルジーを帯び、その濃密さをより一層高めています。また心音のように穏やかに、しかし確実なアタック感を保ったビートは上モノと密接に絡み合い、心地良い速度で浮遊感を助長させています。そしてミニマルで在るが故の恍惚感を目一杯に滲ませると同時に、非常にメロウで時にはドラマチックにすら思える展開があり、単なる雰囲気モノには終わらない構築性を持っているのも重要。11分に及ぶ 「Black Sea」 はちょうど良い例で、優しく多幸感に満ちた前半からベースラインが前面に押し出された後半はまるで別の曲のようなのに、長い尺の中で光と影がグラデーション的に移り変わり、まるで違和感を感じさせない。さらなる深みに到達した傑作です。

Rating: 8.2/10