FUJI ROCK FESTIVAL '15 1日目

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個人的に8回目となるフジロックは、少しばかり変わってました。


事前に告知されていた通り、今年は ORANGE COURT が廃止。理由としては音の被りが原因とのことですが、今更それ言うかっていう。ジャズやプログレ、種々のワールドミュージックを主とするこの雑多なステージが、ある意味フジロックを最も象徴していたので、この廃止には結構落胆してしまいましたね。試しにステージがあった場所を見に行ったら、キャンプファイヤー用の薪があるだけの更地と化していました。この空間もったいねえなあ…。


そして例年以上の日本勢の多さ。出演者自体も例年より数が少なかったのですが、その半数近くが日本人。この点に関しては予算の逼迫だとか円安の影響だとか様々な憶測が飛び交ってましたが、まあ日本勢が多くなったことでフジに行く気持ちの踏ん切りがついたという人も多くいるだろうし、一概に文句は言えないのですけどね。ただ全体的に縮小傾向、方向性の転換が図られていた今年のフジ、一抹の不安を感じながら苗場に向かったら天気は澱んでいました。


シアターブルック @ WHITE STAGE
佐藤タイジ率いるシアターブルック、実際に見るのは初めてでした。メンバー全員が方々で活躍する辣腕揃いなわけですが、楽曲自体はオールディーズロックにファンクやラテンの要素が加味された、割とオーソドックスな歌モノ。しかしそこでバンマス胎児の個性がギラギラ光る。実にソウルフルで、仄かにセクシーで、自分の言いたいことをズバッと言ってのける豪胆さ、懐の深さを感じさせる歌。愛と平和、自由、そしてプロテスト。まあいきなり MC で 「投票に行こう!」 と呼びかけられても、客はみんなきょとんとしてたけどね…。ただ彼のハートフルな男気はしっかり伝わってきました。あと関西のおっちゃんらしい気さくさがあるなと思って試しに調べてみたら、徳島出身だったんですねこの人。俺と一緒!


トロールズ @ WHITE STAGE
こちらは元東京事変長岡亮介浮雲) 率いるスリーピース。今までスルーしてましたがこれは結構なめっけもんでした。まず東京事変でも見せていた浮雲のギターワークの達者さよ。余計な力は入れず、全弦全フレットを自在に飛び回り、次々と繰り出される不可思議な和音/フレーズの数々。このバンドではその妙技が全編に渡って惜し気なく披露されており、そこにエフェクターの飛び道具も加わればもはやギターが別の楽器に思えてくるほど。しかしそれがテクニックの露骨な見せつけにはならず、むしろ必要不可欠なことしかしていないような印象すら受ける。多分メインとなるフレーズに対してのオカズではなく、ほぼ全てがオカズのみで構成されているような状態だからかも。そんな強烈なギターに対してリズム隊は的確に横揺れのファンキーなグルーヴを打ち出し、さらにメンバー全員がヴォーカルを担当してハーモニーにも力を入れる。1曲の中でフックの嵐。でも情報量過多にはならない風通しの良さもあり。このバランス感覚に長けたセンスの良さには唸るしかありませんでした。このバンドを聴いた後で事変を聴けばまた印象が変わるような気もする。


井乃頭蓄音団 @ 木道亭
まさか出ると思わなかった個人的に最大の衝撃。数年前にたまたま MINAMI WHEEL で見かけて以来、常に頭の片隅に残っている憎めないバンドです。この木道亭ではアコースティックセットということで、マンドリンやラップスティールを含めた編成。リハーサルでタイマーズ版 Daydream Believer をカヴァーしたりして、ボードウォークを歩く人々を自然と呼び止める。半分はコミックバンドでありつつ、ブルースロックを下敷きにした確かな演奏陣、国産フォークのノスタルジックな味わいは聴く人を選ばない親しみやすさ。 「親が泣く」 などのトホホだけど憎めない味があったり、 「カニの缶づめ」 のような身につまされる切なさもあったり、 「カントリーロード」 の涙を誘うエモーションもあったり。草むらに腰かけてほのぼのした一時でした。メンバー皆良い笑顔でしたね。


DRENGE @ RED MARQUEE
試聴して少し気になってた、イギリス出身のギター×ドラムのデュオ。ライブではサポートでベースも追加。これは初期のモーサムキングブラザーズなんかを彷彿とさせる、ささくれ立ったオルタナティブ・ヘヴィ・ロックンロール。微妙にニューウェーブ/ポストパンク風の感覚も窺えるあたり特にモーサムっぽい。そこまでファストではないのですが、固く引き締まったディストーションをきっちり叩き付ける、シンプルで硬派な魅力がありました。


ただこの時点で早くも足腰の痛みと眠気に負けて、グリーンステージの木陰に戻り深々と椅子に座ってワンオクをぼんやり鑑賞。なんか生徒会が絵に書いたような不良、絵に書いたようなロックンローラーを演じてるような、例えば Linkin Park なんかにそのまま共通するイメージと言うか、まあ別に嫌いではないけど、うん、みんな楽しそうで良いよね…。


MOTÖRHEAD @ GREEN STAGE
いつぞやのサマソニで見て以来のモタヘ御大。今回まさかのフジロックグリーンです。もう最高のものになる予感しかしませんでしたが、やっぱり最高でした。なんか Lemmy がそのまま Lemmy としてステージに上がって来てくれるだけで眼福みたいな。必要最小限のアクションのみ、しかしその眼は異様に鋭く研ぎ澄まされ、口を開けばやはり堅気の人とは思えないドスの効き方。ただ終始落ち着いてる様子で、 MC はひょっとしたら優しかったのかもしれない。ヘヴィメタルよりもパンクよりも 「ロックンロール」 の言葉が似合う豪快なナンバーの応酬。それ以外特に言うことないし、それだけでみんな笑顔でした。気がつくと俺の隣に佐藤タイジが客に紛れていましたがやっぱり笑顔でした。


FOO FIGHTERS @ GREEN STAGE
せっかくなので見てみたフーファイ。一応事前に過去のアルバムを予習してみたのですが、音源よりも圧倒的に Dave Grohl がシャウトかましまくり、ギター弾きながら暴れまくりで、そのヤケクソ感が演奏全体にエネルギッシュな熱さを与えてましたね。あとは事前に報じられていた通りの足骨折、それに伴う馬鹿みたいな可動式玉座だったり、自ら骨折の経緯をネタにして映像つき解説でウケ取ったりと、結果的にそれがエンターテインメント感割増しな状態になってて良かった。正しく怪我の功名。デイブがこんなに剽軽で熱血なキャラだって知らなかったもんで、色々意外な面が見れて楽しかったです。


すでに疲労困憊のまま2日目に続きます。ベストはぺトロールズ。