SOFT BALLET「EARTH BORN」「DOCUMENT」「3 [drai]」
すでに報じられている通り、森岡賢が49歳の若さでこの世を去ってしまいました。今年に入ってから David Bowie や Prince といった巨星が続いて亡くなっていますが、自分にとっては彼らと同等、いやもしかするとそれ以上の喪失感を痛烈に受けています。自分は去年の minus(-) のライブで初めて彼の姿を目撃したのですが、映像で確認していた通りの不可思議なポップスターっぷりを存分に発揮していて、その時の興奮を今でもはっきり覚えているだけに、いなくなったことがまるで信じられない。今回は自分なりの追悼の辞として、久しぶりのカタログ総ざらい企画を行いたいと思います。彼が SOFT BALLET として残したオリジナルアルバム9作品を3回に分けて。
- アーティスト: SOFT BALLET
- 出版社/メーカー: アルファレコード
- 発売日: 1989/09/25
- メディア: CD
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自分が初めて聴いたソフトバレエはロマンポルシェ。監修による80年代コンピ「ニューウェーブ愚連隊」に収録されていた「BODY TO BODY」だったと記憶しています。無機質で暴力的とも言えるエレクトロビートと、艶めかしくも野蛮なヴォーカルの異様な存在感、ネオンの極彩色が照らし出す革張りの夜の魅力。もう10年以上前のことですが、当時はテクノがここまで人間臭い血の通った音楽に成り得るのかと衝撃を受けたものです。そしてこのデビュー作。この時点で各メンバーのアクの強い個性はバチバチに火花を散らし、他にはないオリジナリティをすでに確立しています。いかにも80年代的なボディビートと場面によっては歌謡曲スレスレの情感豊かなメロディは、今の時代に聴くと一周回って再評価を受けるべきエッジィな魅力。今作でもオープナーを飾っている代表曲「BODY TO BODY」を筆頭に、性急なスピード感が妖艶さを際立たせる「HOLOGRAM ROSE」、エキゾチックな浮遊感がドップリ陶酔に浸らせる「KO・KA・GE・NI」、表題通りに力強く壮大なスケールで展開する「EARTH BORN」など、すでに精力漲りまくりの才気溢れる一発目。
Rating: 8.0/10
- アーティスト: SOFT BALLET
- 出版社/メーカー: アルファレコード
- 発売日: 1994/09/28
- メディア: CD
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前作では R-18 の如何わしさ満載なムードを振り撒きながらも、楽曲によってはまだ若さ故の手探りな部分も見られましたが、今作ではそこからさらに焦点が絞られています。インダストリアル由来のハードなアタック感を一層研ぎ澄ませた「NO PLEASURE」に始まり、不穏なムードの中で波打つ奇妙なベースラインが印象的な「JARO'68」、何故かカントリー要素を取り入れながらも単なる飛び道具では終わらないポップネスが光る「TWIST OF LOVE」等々、引き締まった音像でビルドアップされたシンセポップサウンドは聴き所多数。前作からわずか7ヶ月というハイペースにも拘らずきっちりと向上したクオリティを提示してくるというのが、当時のエネルギッシュな勢いを強く感じさせますね。そしてラストに据えられた「AFTER IMAGES」は瑞々しい美しさを見せる新境地。なんて感動的なカタルシス。90年の時点においてアートとポップの綱渡りをスムーズに達成しているこの成熟っぷりは、BUCK-TICK などの同胞と比較しても随分と早すぎるのではないかと。もちろん彼らはここからまだまだ進化を遂げるわけですけどね。
Rating: 8.2/10
- アーティスト: SOFT BALLET
- 出版社/メーカー: アルファレコード
- 発売日: 1996/12/21
- メディア: CD
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表題は単純に3作目ということと、遠藤遼一/藤井麻輝/森岡賢という際立ったキャラクターの三者三様という意味合いでしょう。内容は通常のソフトバレエとして制作された2曲と、メンバー各々がヴォーカルを執ったソロ曲が3曲。シンセポップとアンビエントにボサノヴァ風の落ち着いた南国フレイヴァーも加味した森岡曲「BRILLIANT FAULT AND SKY WAS BLUE」、完全にインダストリアルへと振り切った攻撃性全開の藤井曲「MUCH OF MADNESS, MORE OF SIN」、そして幻惑的でスピリチュアルな印象の強い遠藤曲「FLOW」。意図的に作風を分けたというのもあるでしょうけど、もう笑ってしまうくらい方向性がバラバラ。よく一緒にバンドやってるなというこの危ういバランス感覚こそが、ソフバをソフバたらしめている最大の要因なのですね。ただ冒頭のバンド曲「BACK LASH」「EXIST」にしても、明快なキャッチーさではなくミステリアスで濃密な空気感を重視した、やや実験寄りな作風。総じて彼らをより深く理解するためのマニア向けな内容ではありますが、ある意味彼らの異形さが最も分かりやすく表れています。
Rating: 7.1/10