Alcest「Kodama」

KODAMA

KODAMA

フランス出身の2人組による、2年7ヶ月ぶり5作目。


今作は「もののけ姫」から着想を得て、「人間世界と自然世界の対立」をコンセプトに作られたとのこと。バンドの中心人物 Neige はとりわけサンに対して「自分と同じものを感じる」という入れ込みようらしいです。マジっすか。まあそれはともかく、サウンドに関しては完全に正統派シューゲイザーと化した前作「Shelter」からの揺り戻しが働き、場面によってはハイトーンシャウト、激しいブラストビートも入るなど、従来のブラックメタル要素が復活しています。しかし過去作のようにブラックメタルからシューゲイザーに寄ったというよりは、一度すっかりシューゲイザー畑に移住してからブラックメタルに寄せてきたという、微妙なベクトルの違いが感じられます。つまりはメタル本来の激しさよりも、空間的な音作りによる浮遊感や包容力の方が基盤にあり、物悲しくヘヴィなムードの中にも何処かしら優しさが通底しているのですね。まあほとんど誤差の範囲と言えばそうだし、大胆な実験を経た後で Alcest としての個性が拡張されているかというと難しい気もする。しかし彼らならではの外連味の効いた幻想的な世界観にはついつい引き込まれてしまうのでした。

Rating: 7.2/10



Alcest - Kodama [taken from "Kodama", out on September 30th]